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愛する人
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俺は痛みで震える腕を上げて、大きな身体に抱きついた。
「あ…アル?ほんとに?アル…っ、なんでっ」
「カナ…捜したぞ。おまえがいなくなったことに気づいてすぐにずっと捜し続けて…、やっと見つけた。良かった…っ、エン国を出る前に見つけることが出来た!カナ、俺が悪かった。嫉妬して…酷いことをしまった。本当に悪かった…」
「うっ…ふぅ…。アルっ、俺…俺っ、来てくれて嬉しい…っ。俺、ホントは…っ、え?な、何これ?」
アルファムの背中に回した手が、ぬるりとした物に触れた。
恐る恐る腕を緩めて手を顔の前に持ってくる。
「あ…あ、なん、で…?」
俺の腕から流れた血よりも更に鮮やかな赤い血が、俺の掌にベッタリとついていた。
「アルっ!俺っ、俺を庇って…っ!」
「大丈夫だ、カナ。こんなのはただのかすり傷だ…」
こんなにも血がついてるのに、かすり傷のわけが無い。
俺は腕と足の痛みも忘れて、ポロポロと涙を流しながら、アルファムの胸に顔を擦り寄せた。
「なぁおまえら、イチャイチャしてる所を邪魔して悪いが、そこの赤髪のおまえ。退け」
アルファムの背後から、バルテル王子の冷たい声が聞こえる。
ーーこのままじゃ、アルが殺されちゃう!
今、アルファムに会えて抱きしめられて、やっぱり俺は彼が好きだと再認識した。
アルファムの匂いを吸い込むと、一瞬で俺の中が幸せに満たされる。
意を決してアルファムから離れたけれど、再びアルファムに触れたらもうダメだ。
俺は、アルファムの傍にいたい。俺だけを見てくれないとしても、俺はアルファムを愛してる。
だから、俺の大事なアルファムを、バルテル王子には殺させない。
俺は、アルファムの胸に顔を擦り付けて涙を拭うと、アルファムの身体を押しやってバルテル王子と向き合った。
「カナ?」
「アルは動かないで。無茶すると傷が酷くなるから」
「ふははっ。素直に殺られる気になったか。従順にしてると言うなら、殺さないで連れて行ってやってもいいが?」
「はあ?冗談。俺はあんたとなんか行かない。死んでも行かない。この世界での俺の居場所は、ここエン国だけだ!」
「…へぇ…。なら、死ね」
またさっきと同じように、バルテル王子が右手を上げる。
俺はいつぞやリオに見せてもらった時のように、 震える腕を上げて、弓を引く格好をした。
後ろに引いた右指に意識を集中させる。
バルテル王子が手を下ろすと同時に、俺の右手の人差し指が燃えるように熱くなり、指先から白い光の矢が放たれた。
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