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新たな始まり
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アルファムに後処理と身体を洗ってもらい、風呂場を出た。
2人共にゆったりとした服を着て部屋へと戻る。
窓の傍にある大きなテーブルに、様々な料理とタライに入った水が置いてあった。
俺はアルファムの手を引いて、ベッドの端に座らせる。
「カナ?食事をしないのか?」
「するよ。だけど、アルの背中の傷をまだ治してないじゃん」
「ああ…、血は止めてあるから後でも大丈夫だ」
「ダメだよ!俺だけ綺麗に治してもらったのに…」
「当たり前だ。カナの白く滑らかな肌は、傷一つついていてはいけない」
「なにそれ…。俺だって、アルの身体に傷がつくのは嫌だよ」
アルファムの前に立つ俺の腕を引いて、アルファムが自分の膝の上に俺を座らせる。
「おまえは優しいな。俺の身体には、この背中の傷以外にも傷跡がある。おまえも見ただろう?」
「…見た。今日の傷や他の傷を受けた時、どんなに痛かったんだろう…って、辛くなった。だからこそ、アルにはもう傷ついて欲しくない…」
アルファムの肩にペタリと頬をつけて呟く。
大きな手が、俺の髪を優しく梳いていく。
「そうか。なら、テーブルに泉の水が置いてあるだろ。その水を布地に含ませて、俺の傷口に当ててくれ」
「わかった」
俺は顔を上げるとアルファムの膝から降りて、テーブルの傍にいく。
布地を濡らして絞り、アルファムを振り返ると、アルファムは上着を脱いで上半身裸になっていた。
その逞しい身体に見蕩れて、思わず動きが止まる。
ーー俺…あんなかっこいいアルに、抱かれたんだ…。
つい先程の情事を思い出してしまい、顔を伏せながらアルファムに近寄った。
アルファムが、クスリと笑って俺の頬を撫でると、背中を向けて「適当でいいぞ」と笑う。
俺はアルファムの広い背中を見て、ゴクリと唾を飲み込んだ。
そこには、真新しい傷を無理矢理塞いだような痕と、数箇所に切られたような赤い筋があった。
バルテル王子にやられた傷に、そっと触れる。
「アル…、これ、自分で塞いだの?」
「ああ、傷口を焼いて止血した」
「すごく痛かった?」
「まあな。だが、慣れている」
「…俺の傷は綺麗に治ったのに。アルのこれは、綺麗に治せなかったの?」
「あの場では、悠長に治す時間が無かったからな。とりあえずの止血だ。カナの傷は痕が残らないように治したかったから、あの場では手当をしなかったのだ。痛みを我慢させて悪かったな」
「そんなの…っ、大丈夫なのに…。この傷、泉の水で綺麗に治る?」
アルファムが俺を振り返り、頭を引き寄せて軽く口付けた。
「痕は残るが、カナが願いを込めてその布を当ててくれたら治る」
「…うん、治るまでずっとやる」
アルファムが笑って再び背中を向ける。
俺は、焼けて盛り上がった傷口に、泉の水を含んだ布をそっと当てた。
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