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式典が終わり、各国の国賓が大広間から出ていく。
彼等と従者達が部屋から出たのを確認して、俺とアルファムも席を立ち部屋を出た。
「アル、もう終わり?」
「ああ、式典は終わりだが、この後宴がある。様々な料理が出るから沢山食べるといい」
「うん。アル、隣にいる?」
「もちろんだ。皆酒が入るからな、カナも決して俺の傍を離れるなよ」
アルファムが、俺を見て繋いだ手に力を込める。
俺はアルファムに深く頷いて、手を握り返した。
ホルガーとシアンが、国賓の方達を案内しているらしく、アルファムと俺の周りには数人の護衛とリオがいた。
リオが、俺の後ろから声をかけてくる。
「アルファム様、俺もカナデのすぐ傍に控えています。怪しいヤツは誰も近づけません。だからカナデも、そんなに緊張しなくていいよ。それに、宴とか初めてだろ?警護は俺達に任せて楽しみなよ」
「リオ…。ありがとう」
リオに振り向いてお礼を言うと、他の護衛の人達も小さく頷きながら俺を見ていた。
この城の人達は、アルファムがライラと婚約解消をして、その原因が男である俺だと知っても、誰一人として嫌な態度を取ったり言ってくる人はいなかった。
それどころか、逆に『神の子を賜った』という噂が広まって、俺を見ると深く頭を下げたり両手を握りしめてお祈りをしてくる人までいたりする。
その度に、『俺は普通の人で、この国ではまだまだ未熟者だから、普通にして下さい』と説明しなければならない。
だって俺は、ただ髪の色がこの世界では尊いと言われる黒い色をしていただけで、何もしていない。
アルファムの為に、この国の為に何かをしたいけど、まだ何も出来ていない。
今、こんなにもよくしてくれる人達の為にも、これから俺の成すべきことを見つけて頑張らないといけない。
式典の間、アルファムを見つめながら、そんなことをずっと考えていた。
宴が催される部屋は、大広間と同じくらいの広さがあった。
正面の奥に、大広間と同じように玉座と少し小さい椅子が並んであり、その周りに数脚の椅子が配置してある。
部屋の中には、壁に沿ってテーブルと椅子が並び、前方には既に各国の国賓が座り、それぞれの背後に従者が控えていた。
後方には、この国の貴族達が座るらしい。
アルファムが玉座に座り、俺はまだ戸惑いながら隣に腰掛けようとして、玉座を挟んで俺と反対側の少し下がった位置にある椅子に座る人物と目が合った。
「あっ!ローラントっ。あれ?さっきの式典の時、いた?」
「カナデ、さっきはすごく緊張してたね。僕、ちゃんと見てたよ」
「え?どこにいたの?」
首を捻って考える俺を見て、アルファムとローラントがクスクスと笑う。
「カナは俺ばかり見てたからな。気づかなくとも仕方がない。ローラントは俺のすぐ斜め前の椅子に座っていたぞ。俺達が部屋に入る前からな」
「え…いた?ごめん、俺、緊張してあんまり周りが見えてなかったから…」
「ふふ、そうだね。カナデは兄上ばかり見てたから。すごく好きなんだなぁって言うのが伝わって、微笑ましかったよ」
「え…ええっ!」
俺ってばそんなにアルファムを見てたのか…、と恥ずかしくなって、両手で熱くなった頬を挟んで俯いた。
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