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「ナジャか?」
薔薇の花が咲く垣根の陰から、ナジャが姿を現した。
手には、水の入ったコップが握られている。
「あ、ナジャ、ありがとう。水を持って来てくれたんだね」
俺がナジャに近づこうとすると、ナジャがいきなり叫んだ。
「来てはダメです!早く逃げてっ。レオナルト様っ!!」
「えっ?」
「カナデっ!」
ぼんやりとする俺を抱えて、レオナルトがナジャの反対方向へと走り出す。
慌ててナジャを見ると、顔を歪めてドサリと倒れ込んだ。
「ナジャ!!レオンっ!ナジャがっ!!」
「わかっている!今はそれどころで…はっ…、く…っ」
「レオン?」
ものすごい速さで中庭を駆け抜けようとしていたレオナルトの動きが、ピタリと止まる。
ナジャと同じように顔を歪めながら、ぎこちない動作で俺を下ろすと「早く…行け…」と言う。
「な、なんでっ?何が起こってるのっ?」
「いいから…行けっ!!」
レオナルトの腕を掴んで問い詰める俺に、レオナルトが怖い顔をして怒鳴る。
初めてみる表情に俺はただならぬ物を感じて、身を翻すと震える足に力を入れて走り出した。
直後に呻き声が聞こえ、チラリと後ろを見ると、レオナルトが胸を押さえて膝をついている。
俺は、何が起こっているのか、何から逃げているのかわからなくてパニックになりながら、城の中へと逃げ込んだ。
アルファムがいる部屋をよく覚えていなくて、とりあえず廊下を先へと走り続ける。だんだんと息が苦しくなってきて、荒い息を吐きながら早歩きで進んでいると、横から腕を掴まれて強く引っ張られた。
「ひっ!だ、誰っ!?」
「俺だ。久しぶりだな。おまえとこうして会うのを夢にまで見たぞ」
「あ…バルテル王子…」
俺の腕を引っ張り壁に押し付けたのは、風の国の王子、バルテルだった。
当然、俺に恨みがあるらしく、鋭い目で睨んでくる。
もしかして、さっきのレオナルトやナジャに何かしたのも王子なのかと、恐る恐る口を開いた。
「王子、さっき中庭で…」
「は?中庭?何のことだ?俺は、おまえが部屋を出て行くのを見て、戻って来るのをここで待ち伏せしていたんだ」
「え?王子…じゃない?じゃあ誰が…」
「何をブツブツと言ってる。ん?そういえば、おまえと一緒に出て行ったスイ国王はどうした?」
レオナルトのことを言われて我に返る。
二人を助ける為にも早くアルファムの所に行かなきゃと、俺は暴れて王子から逃げ出した。
「おい!俺は二度も逃がしはしないっ」
王子が、俺に向かって手を伸ばすのが見えた。
ーーまた風の刃で切られるかもしれない。
それでも、俺は止まらずにアルファムの元へ行くんだ。
身体に感じる痛みを覚悟して唇を噛みしめたその時、王子の呻く声が聞こえた。
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