アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
すぐに飲み物とお菓子を持ってセリムが戻って来た。
2人でソファーに並んで座り、話をする。
俺が違う世界から、どうしてかこの世界へ来たこと。
崖から落ちて怪我をした俺を、アルファムが助けてくれたこと。
アルファムの傍で過ごすうちに、アルファムを好きになっていたこと。
だから、俺は炎の国に帰りたいということ。
セリムは黙って聞いていたけど、寂しそうに笑って言った。
「カナデには悪いけど、俺はシルヴィオ様に従う。だから、カナデをこの城や国から逃がすわけにはいかないんだ」
「うん…。でも俺も諦めない。必ずエン国に帰るから」
俺がセリムの目を見て強く言うと、セリムは困った顔で微かに頷いた。
この城に来る途中で放った俺の魔法を「筋がいいね」と褒めてくれたセリムに、まだまだ練習が足りないことを告げると、「暇な時は練習に付き合ってあげるよ」と言ってくれた。
早速、明日練習を見てもらう約束をして、部屋を出て行ったセリムと入れ違うように、シルヴィオ王が戻って来た。
ここではなく自分の部屋に戻ればいいのに、ソファーに座る俺の隣に腰を下ろして肩を組んでくる。
俺が出来るだけ身体を離そうとすると、逆に強く引き寄せられてしまった。
「ちょっ…。離せよっ」
「なぜだ?ここでは俺が一番偉い。俺に刃向かうことは許されない」
「そんなの知らない。俺はエン国の者だし。早くアルの元へ帰せよっ」
「おまえも中々に頑固だな。ここでは俺に従え。まあすぐにそんな口が聞けないようにしてやるがな」
「あんたも中々傲慢だよ。俺はアルの、エン国王の物だ。あんたの物には絶対にならないからなっ」
「ふっ…、従順な人形よりは元気があって面白いか。ところで、その上着の中に短剣が入っているが、おまえはそれを使えるのか?」
俺は、思わずビクッと肩を跳ねさせて、服の上から短剣を押さえる。
シルヴィオ王は、俺の髪にクルクルと指を絡めながら、余裕の笑みを浮かべていた。
「ああ、そんなに睨まなくても取り上げたりしない。ただ護身用に持ってるのか、戦う為に持ってるのか気になったものでな」
「…俺の、身を守る為だ…」
「そうか」
俺は胸に手を当てたまま、俯いて小さく呟く。
本当は、自分の身は自分で守る為に、アルファムの足でまといにならないようにと、剣を持った。
だけど、いざ使うとなると躊躇する。
身近に戦争を知らないで育った俺は、やっぱりどうしても人を傷つけることはしたくない。
だから今日、逃げる為とはいえ人を傷つけてしまったことを、とても後悔しているんだ。
次に逃げ出すチャンスがあるとしたら、人を傷つけなくて済むような方法を考えなければ。
黙り込んでしまった俺の頭に、シルヴィオ王の大きな手が乗せられる。
「心配しなくてもおまえの物を取り上げたりはしない。俺はそこまで酷い奴ではない」
ーー俺を拉致ってここまで連れて来た時点で充分酷い奴だけど…。
そう思って、俺は小さく溜息を吐いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
74 / 427