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「じゃあそうと決まったら早い方がいいから、今夜抜け出そう」
「えっ?今夜っ!?」
あまりにも早い展開に、俺は思わず大きな声を上げる。
サッシャが慌てて俺の口を抑えて、扉を見た。
「ちょっ…、カナデっ、静かに!そろそろ見張りが戻って来る…」
「ふがっ…、ご、ごめん…。急展開にビックリして」
「だってさ、シルヴィオ王ってカナデを自分のモノにする為に連れて来たんだろ?カナデが元気になったんだから、モタモタしてると今夜にでも抱かれちゃうよ?」
「はっ!そ、それは…嫌だ。よ、よしっ、善は急げって言うしな。俺はどうすればいい?」
サッシャが立ち上がって、食べ終わった食器をカゴに入れる。そして外していた灰色の髪のカツラをもう一度被ると、俺の肩に手を置いてニコリと笑った。
「カナデは、まだ具合が悪いフリをして寝てて。シルヴィオ王は、留守にしていた分の仕事が溜まっているらしいから、夜までここには来ない筈だ。来ても、カナデの様子を見てすぐに出て行くと思う。カナデは誰に何を聞かれても、辛そうに頷いていればいいよ。俺は、夜に、今みたいに料理を運んで来る。その時に城から脱出する」
「わかった。でも俺、寝てるだけでいいの?何か出来ることがあるならやるよ?」
「いいのいいの。カナデは病人の演技をするだけで。脱出してもし見つかった時に、手伝ってもらうかもしれないし、体力を温存してて。じゃあ夜にまた来るから」
「あ、うん。サッシャも気をつけて」
サッシャは笑顔で頷くと、カゴを持って出て行った。出ていく時に、扉の外に交代の見張りが戻って来た姿が見えた。
俺は再びベッドに仰向けに寝転び、赤い石の腕輪がついた左腕を顔の前に持ってくる。
指で石をなぞりながら、アルファムのことを考える。
ーーアル、今どうしてる?きっと、俺を捜しに城を出たんだろうな。でも、俺は炎の国にはいない。炎の国にいなくても、この腕輪で俺の居場所がわかるのかな。アル…俺、サッシャに手伝ってもらうけど、自力で炎の国まで帰るから。だから、俺を迎えに来て。
まる2日間、さんざん眠ったというのに、お腹がいっぱいになったせいか、アルファムのことを考えてるうちに眠ってしまった。
夜になるまでに一度、シルヴィオ王が部屋に来た。
扉が開く音に気づいて目を開けると、シルヴィオ王が入って来る所だった。
ベッドの傍に来て、俺の額に手を当てる。
「熱は下がったみたいだな。体調はどうだ?」
「だ……、えと、まだ頭が痛くて気分が悪い…」
「そうか。食事は全部食べたと聞いたのだか」
「う、うん…。体力つけようと頑張って食べたけど、それが悪かったみたい…」
「仕方がないな。ゆっくりと休め。また夜に様子を見に来る。ああ、安心しろ。病人を襲う趣味はないからな」
俺の頬をスルリと撫でて、慌ただしく出て行く後ろ姿を見て、少しだけ胸がチクリと痛む。
体調の悪い俺を気遣ってくれたからと言って、絆されてはダメだ。
シルヴィオ王は、嫌がる俺を無理矢理拉致した嫌な奴なんだから。
俺は力強く拳を握りしめると、大きく深呼吸をした。
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