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サッシャに手を引かれてバルコニーに出る。
ここは2階で、下を覗くとかなり高さがあって怖い。
ブルリと身体を震わせていると、「さあ行くよ」と、サッシャが俺の手を引いたまま、手すりに片足を乗せた。
「えっ!ち、ちょっと待っ…」
「しーっ!静かに。大きな声出したらダメだよ」
「ご、ごめん…」
サッシャが、繋いでない方の手の人差し指を鼻先に当てて、軽く俺を睨む。
俺は思わず謝ったけど、高い所が怖いのだから、叫んでしまうのは仕方がないと思う。
「大丈夫だよ。軽く着地出来るように、俺が魔法を使うから。カナデは俺に任せてついてきて」
「わ…かった」
俺は渋々頷いて、サッシャと同じように片足を手すりに乗せる。
ーーじゃあ初めからそう言ってくれよ…。アルファムも落ちていく俺を魔法で助けてくれたし、サッシャも同じようなことが出来るんだろうけど。だけどバルコニーに出るなり飛び降りようとするんだから、そりゃあ怯むっつーの。
チラリとサッシャを見ると、まるで子供のように目を輝かせて笑っている。
「行くよ、カナデっ。目を閉じちゃダメだよ」
サッシャが、言うや否や俺の手を引いて手すりを乗り越え、身体が宙に浮いた。
怖くて叫びそうになる口を、慌てて掌で押さえる。
俺とサッシャの周りがポワリと白くなって、スローモーションのようにゆっくりと地面に着地した。
「カナデ、フードを深く被って。この先を行った所にある門で、俺の部下が待ってるから」
「部下?あ、兵士に成りすましてるって言う…」
「そう。この時間、門の見張りをしているんだ。もう一人の見張りに上手いこと言って、眠り薬入りの酒を飲ませてる筈だよ」
「へぇ…」
自分で賢いと言うだけあって、誰を傷つけることもなく、大騒ぎになることもなく、すんなり城を抜け出せそうだ。
まあ、これくらいの策は、誰でも思いつきそうな気もするけど…。
なるべく身体を縮こませて、月明かりが当たらない暗がりの中を進む。
広い庭や倉庫のような建物を抜けた先に、灯りが灯る門が見えてきた。
門の両端に見張りがいるらしいけど、一人は壁にもたれて眠っているようだった。
「サッシャ、あれ…」
「うん。上手く眠らせたみたいだね。立ってる方が、俺の従者のミケだよ」
サッシャが門に近づくと、見張りの男が機敏に片膝をついた。
「サッシャ様、ご無事で」
「まあね、ここまでは余裕だよ。でも、すぐに気づかれるかもしれないから、早く行くよ」
「はい。門を出て、一つ目の角を右に曲がった先にある建物に、帯同してきた部下が待機しております。すぐに参りましょう」
「よし。カナデ、早く」
ミケが、少しだけ門を開ける。
部屋を出る時からずっとサッシャに繋がれたままの手を引かれて、俺は前のめりによろけながら門の外へ出た。
ミケも出てくると、再び門を閉める。
そして俺とサッシャ、ミケの3人は、建物の壁沿いを早歩きで進んでいった。
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