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「サッシャ!どうしたのっ?」
サッシャが苦しそうに顔を歪めながら、俺の視線を避けて前を見る。
サッシャの手綱を掴む手が、ブルブルと震えている。
俺は、その手の上に自分の手を重ねて、震えを抑えようとした。
と、その時、サッシャに横腹を蹴られたティモが急発進をした。
まだこちらに掌を向けているシルヴィオ王との間に、距離が出来ていく。
サッシャが俺の肩に顎を乗せて、途切れ途切れに言う。
「…至近距離で…魔法を、使われた…っ。防御の膜を張ってあった…から、動きを、封じられることは…なかった、けど、今…かなりきつい…。ここまで…シルヴィオ王の、魔法の力が強い…とは、思わなかった…。カナデ、今の俺は…カナデを守って…やれない。ごめん!」
俺に謝ると同時に、サッシャが俺の肩を掴んで押し退け、馬の背中から落とした。
「えっ?ちょっ…!うわぁっ!!」
頭から落ちて行く俺の目に、苦しそうにしながらも、親指を立てて笑うサッシャの姿が映る。
ーーええっ!!何で笑ってんのっ!?あっ、そうか!このままだとシルヴィオ王にやられちゃうから俺だけでも逃がそうと…。いやでも、この高さから落ちたら死んじゃうじゃん!落とすなんてひどくないか?
かなりの速さで落ちていきながら様々な思いが脳裏に浮かぶ。
結局俺は、落ちて最後を迎えるんだな…と目を閉じた瞬間、誰かに抱きとめられて、馬の背に座らされた。
「大丈夫か?カナ」
耳に響く低い声。
鼻腔を掠めるうっとりとする匂い。
抱きとめられた瞬間から気づいてた。
でも、でも…まだここは月の国の中なのに。
「…どうして?アルっ!」
アルファムの服を掴み、広い胸に頬を擦り寄せて見上げる。
見上げた先に、俺の大好きな端正な顔があった。
「おまえの腕輪ですぐそこまで来てるのがわかった。ただ、静かに逃げて来るにしては、速度が尋常ではない。これは追いかけられているのだと即座に気づいて、おまえを助けに来たのだ」
「じゃあ…、サッシャはアルに気づいて…」
「サッシャと言うのか?おまえを連れていた奴は。奴が目でおまえを離すと示してきたのだ。奴は…味方だな?」
「うん…っ。サッシャが俺を城から連れ出して、ここまで連れて来てくれたんだ。彼は、日の国の王子だよっ」
「ああ…なるほど。どこかで見た記憶があると思っていたが。俺の即位した年に、日の国の王が連れて来ていた、あの王子か」
「サッシャは、とても優しくていい人なんだっ!早く彼を助けてっ!」
「ああ、わかった。ここまで俺についてきたという事は、手伝ってくれるのだろう?レオナルト王よ」
「えっ?」
後ろを振り向いたアルファムにつられて、俺も首を伸ばして見た。
「当たり前だ。その為にこんな所まで来たのだからな」
青いマントを身にまとい愛馬ラルクに跨ったレオナルトが、アルファムに向かって不敵な笑みを浮かべていた。
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