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果物を食べた後にまた眠くなり、アルファムに手を繋いでもらって少しだけ寝た。
アルファムに触れている安心感から、今度は悪い夢を見なかった。
目が覚めた時に忘れてしまったけど、とても良い夢を見ていた気がする。だってアルファムが、「可愛い顔で眠っていたぞ」と笑っていたから。
夕食の前に、俺はアルファムに抱き抱えられて、シアンがいる牢屋に向かった。
歩くと言ったんだけど、心配性になってしまったアルファムが許してくれなかった。
城から少し離れた場所にある建物に入って、地下へと続く階段を降りる。
窓がないから光は入らないものの、どこかに通気口があるのか、息苦しい感じはしない。
俺とアルファムの前を歩くリオが進むと、壁に取り付けられた丸い透明の玉に灯りが点っていく。
階段を3度曲がって降りた所は、正面は壁で左右に通路が伸びていた。
地下には等間隔に灯りが点いて、城の中ほどではないが、そこそこ明るい。
右側の階段横のすぐの牢に、シアンが大の字の形で、壁に打ち付けられている鎖に繋がれていた。
橙色の髪を垂らして俯いているから、どんな表情をしているのかがわからない。
アルファムが、俺の頬に口付けて静かに頷く。
俺も頷き返すと、ゆっくりとアルファムの腕から降ろしてもらい、大きく息を吸って鉄格子を握りしめた。
「…シアン。俺、カナデだよ。俺はもう大丈夫だから…。元気になったから、シアンは何も気にすることないよ」
シアンの身体がビクリと揺れ、鎖がガシャリと鳴る。
ゆっくりと顔を上げて、橙色の髪の間から、まっすぐに俺を見た。
「…いえ、カナデ様。知らなかったとはいえ、俺の手配した食べ物で、あなたが危険な目にあったのです。アルファム様の大切な方に大変なことをしてしまいました…。俺の命をもって、お詫び致します。だからどうか、この鎖を外してください…」
喉の奥から絞り出すように紡がれる言葉。
シアンはきっと、真面目で責任感が強いんだろう。
それは良いことなんだけど、少し頑固過ぎやしないか?これは俺がどんなに『もういいよ』と言ったところで、聞く耳を持たない気がする…。
俺は更に大きく息を吐くと、眉間に皺を寄せて困った顔をした。
「なぁシアン。俺は、アルの有能な側近のシアンが好きなんだ。そのシアンが、俺が迂闊にも口にしてしまった毒のせいで命を絶ったりしたら、俺はずーーっと苦しむことになる。『ああ…、俺がデザート食べちゃったせいで、シアンは死んだんだよなぁ…』って。甘い物を見る度に思い出して苦しんで、もう二度と甘い物は食べられなくなる。シアンはさっき俺のこと、『アルファム様の大切な方』と言ったよね?その俺が、この先ずーーっとシアンのせいで苦しんでもいいんだね?そうなると、俺はシアンを恨むしアルもシアンに怒ると思うけど…。それでもいいなら、勝手にしなよ」
「カナ…」
アルファムに優しく呼ばれて、力強い腕に抱きしめられた。髪の毛を撫でながら「泣き虫め」と、アルファムの笑いを含んだ声がする。
そこで初めて、俺は涙を流していることに気づいた。
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