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アルファムに睨まれて、鉄格子を掴む女の人の両手が震える。カタカタと揺れる鉄格子の音に混じって、小さな声が聞こえてきた。
「…イラ…様、ライラ様です。わたしに…カナデ様の口にする物に毒を入れるように言ったのは、ライラ様ですっ」
「なんだと?」
「ラ…イラ…?」
俺を抱きしめるアルファムの腕に、力がこもる。ふぅー…と頭に風を感じてアルファムを見上げると、緑色の目を吊り上げ唇を噛みしめて、今にも爆発しそうになる怒りを堪えているようだった。
俺は身体の向きを変えて、アルファムを抱きしめた。
「アル…、俺は大丈夫。そっか…、ライラだったんだね。何か納得した。俺はライラに憎まれて当然だもんね…」
「なぜだ?おまえが憎まれる謂れはない」
アルファムが、俺を更に強く抱き寄せる。
俺は硬い胸に頬をつけて、小さく首を振った。
「あるよ。だって俺は、ライラからアルを取ったんだよ。好きな人を取られて悔しい気持ちはわかる…。だって俺も、もしもアルが誰かの所に行っちゃったら…その誰かを憎むと思う」
「俺は自分でカナを選んだのだ。そもそも、はじめからライラに恋愛感情など持っていない。恋人でも何でもなかったしな。父王とライラの父親が交わした約束で、勝手に婚約者とされていただけだ。別に好きな相手もいなかったからそのままにしていたが、愛するカナが現れたのだから、必要ないと城から出したのだ。ライラも、父親の下らない約束から自由になれたのに、なぜカナを殺そうとしたのかわからん。すぐに身柄を拘束して、処罰する」
「えっ!ちょ…ちょっと待ってよ!」
俺は、アルファムの胸を押して顔を上げた。俺の背中に回されたアルファムの手が、怒りのせいなのかとても熱い。
「なぜ止める?」
「ラ、ライラはっ、アルのことが好きだったんだよ?親同士が決めた相手でも、アルのことが大好きだったんだよ!きっと、アルと結婚する幸せな未来を夢見てたはずだよ…。なのに俺が現れて、その未来が消えてしまったから…。だから邪魔な俺を殺そうとしたんだと思う。そうでもしないと、やり切れなかったんだと思う。でも…それでも、ライラには悪いけど…俺はアルが好きだからアルの傍を離れない。…ねぇアル、俺のことで、そんなに怒ってくれてありがとう。とても嬉しいよ。アル、愛してる…」
「カナ…」
「俺さ、俺を殺そうとしたライラを許せる。アルが絶対に許せないって思う気持ちもわかってる。だけど、ライラの悲しくて悔しい気持ちもわかるから…。俺だって、アルが誰かの所に行ってしまったら、その誰かを恨んで殺そうとするかもしれないよ?」
「誰よりも人の気持ちを考えるおまえは、そんなことはしない」
俺は、ポカンと口を開けてアルファムを見た。俺を見つめる緑色の瞳が、廊下の壁に取り付けられた灯に反射して、とても綺麗だ。
俺の胸が、キュンと締めつけられて苦しくなり、声が震えた。
「アル…俺のこと、そんな風に思ってくれてありがとう…。うん、そうだね…、確かに俺は誰かを殺したりなんて出来ない。傷つけるのも怖いもん。でもそれは、優しいと言うより臆病なんだよ。アルや俺の周りの大切な人達を守る為に強くなりたいのに…」
「おまえはそのままでいい。充分強いと思うぞ。おまえの心の強さを、俺は見習わなければならない」
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