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俺は、アルファムの手に自分の手を添えると俯いた。
「だって、この世界の…この国のやり方があるだろ。俺はここで生まれ育ったわけじゃなく、よその世界からきたわけで…。そんな俺の価値観を押し付けるのは違うよな…て、ちょっと思った…。でも俺は、どうしても相手を可哀想に思ってしまう。そんな甘い考え方ではダメなのは分かってるよ。でも、どうしてもそう思ってしまって、それを口に出して言ってしまう…」
更に強く俺を抱きしめて、アルファムが静かに話す。
「そうだな。俺は王だから、罪を犯した奴は厳しく罰を与えねばならぬと思っている。そうしていかねば、国が乱れてしまう。罰を与えることに躊躇いはしない。だが、おまえは甘い考え方のままでいい。そしてそれを、口に出して俺に言ってもいい。俺はどうやら、厳し過ぎることが多々あるらしい。おまえが口に出してくれると、一瞬立ち止まって考える。おまえが口に出した所で何も変わらなくて苦しい思いをするかもしれないが、それでも言え。…カナ、こんな俺の傍にいるのは嫌か?」
俯いた俺の目から、ポタポタと雫が落ちる。アルファムの手と、その上に重ねた俺の手を濡らしていく。
俺は数回首を横に振って、鼻をズズっと鳴らした。
「…ううん。アルの立場もわかってるのに、俺、何でもダメって言って…、アル、呆れたかなぁ…って…。俺の方こそ、嫌って思われたかなぁって不安になっ…た…っ」
「そんなこと微塵も思うわけないだろうが。ここだけの話、おまえがいなくなると、このエン国は潰れるぞ。俺の心が壊れて、国を無茶苦茶にしてしまうからな」
俺はモゾモゾと動いて向きを変え、正面からアルファムにしがみついた。
そして凛とした端正な顔を見上げて、クスリと笑う。
「アル…、怖いこと言わないでよ。たとえ俺がいなくなったとしても、ちゃんと王様をしないとダメじゃん。今まで俺がいなくても、立派な王様やってきたんだろ?」
「まあな。だが、カナが悪いのだ。おまえが愛し過ぎるからいけないのだ。それに、例えだとしてもいなくなるとか言うな。俺は、おまえがいなくなることが、何より怖い…」
「アル…ごめん。もう言わないし、俺はどこにも行かない。ずっとアルの傍にいる。だからアルもずっと傍にいて」
「当たり前だ。愛してるぞ、カナ」
「うん…愛してる」
大好きな人の腕の中で、愛を囁かれるなんて最高の幸せ。
アルファムの顔が降りてきて、柔らかく唇が重ねられる。
軽いものから深くなる口付けにうっとりとしながら、俺は頭の片隅で、牢にいたあの女の人のことを考えていた。
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