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「危ない所でしたね。大丈夫ですか?」
男がそう言いながら、俺に笑いかける。
俺は、男を凝視したまま、まだ動くことが出来なかった。
「意外と鈍臭いんだな、カナデ。ん?どうかしたの?」
サッシャに肩を揺すられて、やっと身体の強ばりが解ける。
俺は取り繕うように、慌てて男に頭を下げた。
「あっ…、あのっ、ごめんなさいっ。ありがとう…。俺、ぼんやりしてて…っ」
「いえ、俺が急に声をかけたから驚かせてしまったのでしょう。申し訳ありません。あなたが重そうにしていたので、持ってあげようかと思いまして…」
「え?い、いやっ。俺の荷物だし、持ってもらうのは悪い…」
「そうだね。まだ他にも回るから、君、持ってくれるかな?」
サッシャが男に言うと、男は「承知しました」と言って、鉢植えを抱えて後ろに下がって行った。
サッシャに促されて再び歩き出したけど、俺は気になって、何度も後ろをチラチラと振り返る。
「カナデ、遠慮せずに何でも頼んだらいいんだよ。みんな、カナデを守る為について来てるんだから」
「でも…彼は日の国の人でしょ。俺の用事を頼むのは悪いよ…」
「はぁっ…、ほんとにカナデは優しすぎっ!いいんだって。彼の方から持ちたい、って言ってくれたんだし」
「そうだけど…」
「もうこの話は終わり!ところで、なんでさっきあんなに驚いてたの?」
サッシャに聞かれて、ドクン!と心臓が跳ねる。
俺は、何も答えられずにそっと俯いた。
ーーなんで驚いたのか?
それは、彼が颯人に、元いた世界での恋人に似ていたからだ。いや、似てるってもんじゃない。そっくりだ。髪の色こそ明るい山吹色をしているけど、茶色い瞳と整った顔、この世界では低めの180cmくらいの身長までもそっくりだった。
もう一度後ろを振り向いた時に、彼と目が合う。
一瞬目を見開いた後に、彼がニコリと微笑んだ。その甘く優しい笑顔までもが本当にそっくりで、懐かしさで俺の胸が苦しくなった。
それから見たことの無い珍しい食べ物の店や、色とりどりの服を売ってる店を覗いた。
エン国では、プリンのようなお菓子があるけれど、ここディエス国には、ゼリーのようなお菓子があることがわかった。
サッシャに勧められて食べたそれは、何かの柑橘類が入ってるのか、控えめな甘さと爽やかな酸味でとても美味しかった。
服屋では、部屋着用にディエス国の民が着ているゆったりとした、上から被る大きめなTシャツのような服を、俺とアルファム用に買った。淡い黄色で、大きさの違う物をお揃いで二着。部屋で寛ぐ時に着ようと、服を見ながら顔を綻ばせた。
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