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日の国の街を見て回って思ったことは、とても栄えて賑やかで、活気に溢れてるということだ。
炎の国は、どちらかというと落ち着いた雰囲気で、街の人達も物静かだ。
サッシャが、日の国は治安がいいと言ってたけど、炎の国も治安がいい。それは、国中が満たされているからだ。
炎の国には、地下に大量の資源が埋まっていて、それを他国に売っている。だから国が潤って、国民の暮らしも豊かで、人々の心も安定してるから、犯罪が驚くほど少ない。
日の国は、一年間の日照時間が他国よりも断然長い。だから木や植物がよく育ち、それらを他国に売っているらしい。
山の国も木が豊富らしいが、日の国のものよりも強度がない。だから、他国は日の国のものを好んで買いつけるのだと、サッシャが教えてくれた。
ただ、日照時間が長いということは、雨が少ないことになる。油断しているとすぐに水不足に陥ってしまう。
だから、木や植物など優先的に水の国へ送り、水の国からは、大量の水を仕入れているのだそうだ。
街中を歩きながらそんな話を聞き、俺は興味深く頷いていた。
日の国も治安がいいと言うだけあって、特に何も起こらなかった。お店を覗くと気軽に声をかけてくれるし、街の人も並んで歩く俺とサッシャを、微笑んで見てくれている。
時おり不躾な視線を投げてくる人もいたけど、すぐにリオとミケが、その視線を遮るように俺とサッシャの前に立ち、睨み返していた。
「カナデ、大丈夫?今みたいに見てくるのは、他国者だよ。ほら、髪の色が茶色い。日の国にも茶色い髪のひとがいるけど、あの人は明るい茶色をしている。あれは、風の国出身だな…」
「風の国…」
俺は、風の国と聞いて、煌めく長い金髪を風になびかせながら、俺を殺そうとしたバルテル王子の顔を思い浮かべた。
ピクピクと顔面を震わす俺に気づいて、「どうしたの?」とサッシャが聞く。
俺は、行こうと顎で示しながら、再び歩き出した。
リオとミケが自然と後ろに下がり、俺はサッシャと並んで歩きながら、ポツリと答える。
「風の国の王子って、知ってる?」
「知ってるよ。昔うちの父王が風の国に招待されたことがあって、俺、ついて行ったもん」
「え?すごいっ。じゃあ会ったことあるんだ…。どうだった?」
「どう…って…。なんか目つきの悪い嫌な奴だった。俺が仲良くしようと可愛い笑顔で近づいたのに、フンっと鼻で笑ってどっかへ行ったんだ。あ、なんか話してたら腹が立ってきたぞっ」
「あ…っ、ごめん。嫌なこと思い出させて。俺さ、バルテル王子に殺されかけたことあるんだよ。だからさっき、風の国って聞いて、俺も嫌なこと思い出しちゃってさ。ごめんね」
「えっ!そうなの?カナデって、結構危ない目に合ってきてるね…。でも俺は味方だし、ここは安全だから、安心して楽しんでいってね」
「うん、ありがとう」
優しく笑うサッシャに笑い返したその時、視線を感じて振り返った。
また他国者が見ているのかと思ったけどそうではなくて、颯人に似た男が、どんな感情か読み取れない視線を俺に向けていた。
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