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長い廊下を進み、階段を上がってまた進む。一番奥にある部屋の前で立ち止まり、俺は後ろを振り返った。
「ありがとう。ここが俺の部屋だから」
「部屋の中までお持ちしますよ」
ハマトが、しっかりと鉢植えを抱えたまま笑って言う。顔は笑っているけれど、折れそうにない意志の強さを感じて、俺は諦めて扉を開けた。
「どうぞ…」
「失礼します」
中に入る俺に続いて、ハマトが入ってくる。部屋の中をひと通り見回すと、窓辺に進んで鉢植えをそっと降ろした。
「ここでいいですか?陽がよく当たって花に良さそうだ」
「うん、いいよ。重かったでしょ?本当にありがとう」
「容易いことです。あなたの華奢な姿を見ていたら、つい声をかけてしまった…」
窓の近くにあるテーブルの上に荷物を置こうとした俺の腕が、不意に掴まれる。
俺は驚いて、服や小物類が入った袋を落としてしまった。
慌てて腕を引くけど、そんなに強く握られているわけでもないのに、腕が外れない。
俺は、隣に立つハマトを困った顔で見上げた。
「何?離してくれる?」
「…すいません。あまりにも華奢な腕が気になって、つい触れてしまいました」
「…この世界の人達と比べたら、俺は小柄だからね。だからと言って、そんなにひ弱ではないよ。…もういいだろ?離して」
「腕だけではありません。肩も腰もこんなに細くて…。傍にいて、守ってあげたくなる…」
「え?あっ!やめ…っ」
もう一度引いた腕を逆に強く引かれて、ハマトに引き寄せられる。俺の顔がハマトの胸に当たったと思ったら、背中に腕を回されて強く抱きすくめられてしまった。
全身を捩って抜け出そうとするけど、ビクともしない。俺は少しだけ動く手で拳を作り、硬い胸をどんどんと叩いた。
「なっ、なにするんだよっ!離せよっ」
「すいません。少しだけ…このままでいさせて下さい…」
「はあ?なんでっ?俺に何か恨みでもあんの?」
「恨みなどあるはずがない」
「じゃあ何だよっ。今日初めて会ったばかりだろっ!どういう意図でやってるんだよ!」
「どういう…」
ハマトの腕からフッと力が抜け、俺は慌てて胸を強く押して距離を取った。
強く抱きしめられたせいで息が苦しい。
胸に手を当てて呼吸を整えていると、「カナデ様…」と呟いて、ハマトが近づいてきた。
「くっ、来るな!俺に触るなっ。お、俺を裏切ったくせにっ。今さらそんな優しい顔をして、俺の前に現れるなっ!」
「カナデ様?いったい何のことを…」
「カナデっ!どうした?」
その時、勢いよく扉が開いて、リオが飛び込んで来た。
俺と目が合うなり顔色を変えて駆け寄り、俺の背中を撫でる。
「カナデ…、大丈夫。ゆっくり息を吸おうか」
「あ、あ…リオ…」
「大丈夫…」
リズムよく背中を撫でられて、俺の呼吸が楽になっていく。どうやら俺は、パニックになって、上手く息を吸えてないようだった。
「なあ、おまえ。カナデに何をした?返答によっては許さないぞ」
初めて聞くリオの低く冷たい声。そっと伺った顔は氷のように冷たく、とても怒っていることがわかる。
ハマトは、リオの静かな声にたじろいで、二三歩後退った。
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