アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
10
-
一瞬たじろいだハマトが、俺を見て深く頭を下げた。
「カナデ様…、申し訳ごさいません。決してあなたを怖がらせるつもりはなかったのですが…。結果的にそのように怖がらせてしまった。以後気をつけます。失礼します」
俺から視線を逸らさずに、ゆっくりと顔を上げる。そしてすぐに身体の向きを変えて、扉の方へと歩き出した。向こうをむく瞬間、ハマトの茶色い目にキラリと光るものが見えた気がした。
俺は驚いて、思わず「ハマトっ」と声を出してしまう。
だけどハマトが振り返ることは無く、 部屋を出て行くと同時に、扉がバタンと閉まった。
俺は、力が抜けたようにストンと椅子に座る。
ハマトは颯人ではない。颯人がこの世界にいるはずないのだから。
でも、優しい口調で甘い目をして、俺に興味があるような言葉を吐いて触れて、俺はひどく混乱してしまった。
これは、俺の気持ちの問題だ。ハマトは颯人ではないんだ。しっかりしなければ…。
「カナデ、本当に大丈夫?あいつに何された?」
リオが屈んで俺を覗き込み、心配そうな顔で聞いてくる。
まだ震える指先を握りしめて、俺は何とか笑ってみせた。
「心配させてごめん。ほら、俺って貧相な身体してるじゃん?だからハマトは俺を守りたいんだって。で、いきなり抱き寄せられたから、び…びっくりしたんだ。たぶん、ほら…、弱々しい小さな動物とか見たら、つい撫でたり抱いたりしたくなるだろ?そんな感じで触れたんだと思う…」
「はあ?なんだそれ。あいつ、もしやカナデのことを…。ちっ、アルファム様に報告しないと…」
「え?なんて?」
俺の言葉を聞いて、怖い顔から渋い顔になったリオが、小さくブツブツと呟く。
よく聞き取れなくて聞き返した俺を見たリオが、ますます渋い顔をして言う。
「カナデ、カナデもよく注意しろよ。あいつは親切で鉢植えを運ぶと言ったんだろうし、カナデも微塵も疑ってないようだったから、敢えて無理にはついて行かなかったんだ。だけど少し不審に思ったからすぐに後を追った。そうしたら、扉が見えた瞬間、カナデの大きな声が聞こえてさ。慌てたよ」
「ご、ごめん…」
俺は、しゅんと項垂れて、装飾としてテーブルに埋め込まれた薄く黄色がかった透明の石を、指で何度もなぞる。
「短い時間だったし何も出来ないだろうけどさ。……いや、抱き寄せられたんだっけ?ふう…、カナデはもうあいつには会ったらダメだよ。日の国の王子にも、あいつを接触させないように頼んでおくから。俺は、アルファム様の逆鱗に触れたくないからなっ」
「逆鱗って…。リオは何もしてないじゃん…。大丈夫だよ。逆鱗に触れるとしたら、俺だよな。気をつけるように何度も言われてたのに…。でもさ、男が抱きついてくるとは思わないじゃん?女の人とは、二人にならないように気をつけてるけど、男は気をつける必要ないよね?」
勢いよく顔を上げて、身を乗り出した俺の肩に、リオが手を置く。ぐいと近づいたリオの顔が、ピクピクと震えているように見える。
「あのな、カナデ…、ここでは、男が男を好きになるのは普通だ。だから、男と部屋で二人になっても気をつけないといけない。特にカナデは可愛いから、ホントーに気をつけないといけない。俺や日の国の王子は、カナデと同じ側だから安心だけどな」
「同じ側?」
「そう、男に抱かれる側ということだよ」
「え?…えぇっ!」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
119 / 427