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俺は、右手に持つ短剣を下に構えて、男に突進する。下から振り上げた短剣を、男が後ろに下がってヒラリとかわす。
すぐに振り向き短剣を横になぎ払うけど、これも軽くかわされてしまう。
「遅いねぇ。そんなんじゃあ、いつまで経っても俺にかすり傷ひとつ付けられないぜ。ん?ああ…おまえの仲間がこっちに向かって来てるな。もう時間がない。遊びはここまでだ!」
「く…っ!」
そう叫ぶと、男は短剣を振り上げて俺に向かって来た。
振り下ろされた短剣を、一度は刃で受け止めて振り払う。だけど、男の動きがとても素早く、俺がもう一度構える前に、短剣を突き出してきた。
「あっ!」
マズいと思った時にはもう、俺の右腕に細い刀身が突き刺さっていた。
「カナデ様!」
「くぅ…っ」
「おや?痛いと泣き叫ばないのか?ふ~ん、中々に根性があるな。そういう子は嫌いじゃない」
男がそう言って、短剣をスっと引き抜く。
俺は、落としそうになる短剣を左手に持ち替えると、大きく踏み込んで真横に振り抜いた。
一瞬、動きを止めた男が、指で自分の頬を拭う。その指には、赤い血がベッタリとついていた。
「ふ…ふふ、あははっ!おまえ、やるじゃねぇかっ!まさか俺が傷をつけられるとは思わなかったっ!俺はさぁ、強いんだよ。ここ何年も、誰にも負けたことがない。なのに、おまえみたいな色白のちっぽけな奴に傷をつけられちまった……。ちっ、許せねぇ。もういいわ。依頼主には、その綺麗な顔だけを持って帰りゃあいいよなぁ!おまえの身体は切り刻んでやらなきゃ収まらねぇ!」
「さ、さっきから思ってたけど、あんた趣味悪過ぎ。絶対に友達とか恋人いないだろっ。俺には、大切な恋人も友達もいる!だから、簡単には殺されないからなっ!」
「ああ!おまえ、俺を馬鹿にしてるのかっ!マジで許さねえ!このクソガキがあっ!」
男がすごい勢いで突っ込んで来るのを、横に飛び退いて何とかかわす。恐ろしい形相で俺を睨む男に向かって、血塗れの右掌をかざし意識を集中させる。掌が熱くなった瞬間、大きく振り上げると、足下にあった拳大の石ころが飛び跳ねて、男の肩に勢いよくぶつかり鈍い音がした。
「ぐっ、くそ…っ!舐めた真似しやがってっ!!」
男が叫ぶや否や、短剣を思いっきり投げた。それは、正確に俺の胸へと軌道を描く。
俺はもう、腕も足も疲れて痺れて、避けることが出来ない。
ーーアル、ごめん。また心配かけさせちゃうな。せめて、大怪我はしても死なないようにするから、許して…。
せめて致命傷は避けたいと、俺は渾身の力を振り絞って身体を横にずらせようとする。
その時、向かってくる短剣から俺を守るように、俺の視界を大きな背中が遮った。
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