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俺の視界を塞いだ背中が、ゆっくりと崩れ落ちる。
俺は息を呑むと、慌ててしゃがみ込みハマトの肩を揺すった。
「ハマトっ、ハマトっ!しっかりしてっ!!」
「…カ、ナデ…様…、お怪我、は…」
「俺は大丈夫!ハマトが守ってくれたからっ…」
「…よかっ…た…」
「ハマト…っ!」
少し横を向いたハマトの胸に、男が投げた短剣が突き刺さっているのが見えた。
俺は短剣の柄を掴んで、抜こうとして動きを止める。
抜いて傷口を押さえた方がいいのか、このままにしておいた方がいいのかがわからない。
ーー俺はアルファムのように治癒の魔法も知らないし、一体どうすれば…っ!
鼻の奥がツンと痛んで、ハマトの顔がぼやけて見える。
こんな時に泣いてる場合じゃない!と鼻をすすって目を瞬かせていると、「おい」と呼ばれた。
声がした方に顔を向けた瞬間、思いっきり脇腹を蹴りあげられた。ハマトの身体の上を飛び越えて、俺の身体が数メートル向こう側へと転がり落ちる。
俺は、蹴られた箇所を手で押さえて身体を丸めながら、痛みと吐き気を堪えて小さく呻いた。
「う…ふっ…」
「おまえ…さっきのは何だ?魔法か?くだらないことしやがって!それに、そいつに二度も邪魔されたが、今度こそ終わりだっ」
男が叫ぶと、大きく足を振り上げた。男のブーツのかかとがキラリと光り、鋭い刃が飛び出ているのが見える。
ーーうわ…、どこに仕込んでるんだよ…。趣味悪い奴だな。あれ、結構長くてかなり痛そうだ。アル、また治してくれるかなぁ。
そんなことを呑気に考えながら、横に転がって逃げようとするけど、蹴られた横腹がズキズキと痛くて動けない。
俺は、せめて致命傷は避けたいと、両腕を上げてガードした。
男のかかとが振り下ろされ刃が腕を掠めた瞬間、「カナデっ!!」と叫ぶ声がして、男の身体が弾き飛ばされる。
声が聞こえてきた空を見上げると、サッシャとミケ、リオが飛翔馬に乗って舞い降りてきた。
「カナデ!無事か?あっ!腕に怪我してるじゃないかっ。腹も刺されたのかっ?」
「サッシャ…。来てくれた…っ。俺はいいから、ハマトを早くっ!ハマトは俺を守って…」
「ハマト!しっかりしろっ。命令違反をしたことは許せないが、よくカナデを守った。ミケ!治癒の魔法をっ」
「はっ」
ミケが素早く馬から降りて、倒れているハマトに駆け寄り、刺さったままだった短剣をゆっくりと引き抜く。抜いてすぐに掌をかざすと、傷口が淡く黄色に光り出した。
ぼんやりとその様子を見ていると、リオに身体を起こされた。
リオは、泣きそうな顔をして、「心配したよ…」と呟きながら、俺の斬られた腕の治癒を始めた。
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