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「えっ!どっ、どうした!?」
ルートが、おろおろと俺の頭を撫でたり背中を優しく叩いたりする。
俺は、いろんな想いがごちゃまぜになってしまい、子供のように泣きじゃくった。
「元気づけようと思ったのに…。参ったな。ほら、泣き止んで?」
ルートが俺を抱きしめて、子供をあやす様に身体を揺らす。
初めて会った人に迷惑かけて悪いな…と思うけど、涙が止まらない。せっかく慰めてもらっても、アルファムじゃなきゃダメだ。
俺は、ルートの胸を押して身体を離そうとする。その時、微かにアルファムの声が聞こえた気がして、俺は勢いよく顔を上げた。
「どうしたの…あ!」
俺が顔を上げた瞬間、城の方から強い風が吹き上げてきた。
風にあおられて俺のフードが取れる。
その直後にルートの大きな声がして、そちらに顔を向ける。
ルートは、目を見開いて俺の髪を指差していた。
「きっ、君…っ!その髪っ!え?てことは…えっ?王様の…」
「カナ!」
苦笑しながらルートを見ていると、頭上から愛しい人の声が聞こえてきた。
俺は再び勢いよく顔を上げる。
青い空を背景に、太陽の光を浴びて輝く白い馬が、俺を目掛けて降りて来た。
俺の傍に着地したヴァイスから、アルファムが降りてくる。
たった五日離れていただけなのに、アルファムを見た途端、恋しくて胸が苦しく締めつけられた。
「カナ!こんな所で何をしている!」
「アル…っ!どうして?まだ国境のはずじゃあ…」
「それは後で話す。他にも話すことがたくさんありそうだな。とりあえず今は…カナ、こい!」
両手を広げたアルファムの胸の中に、俺は全力で飛び込んだ。ぎゅうぎゅうと強くしがみつきながら、やっぱりアルと離れるなんて無理だ、だってこんなに愛してる!と改めて心から思った。
「俺以外の男と、どこに行こうとしてたんだ?」
「行かない…どこにも行かない。俺の居場所は、ここだから…っ」
「途中でホルガーからの使者と会ってな。全て聞いた。カナ…いらぬ心配をかけたな。だが大丈夫だ。俺を信じろ。城へ戻るぞ」
あんなに不安で押し潰されそうだった気持ちが、アルファムの大丈夫だというたった一言で、一気に消し飛んだ。
俺は、蕩けるようなアルファムの緑色の瞳を見つめると、力強く頷いた。
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