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番外編 芽吹き
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アルファムの子供騒ぎが落ち着いて十日ほど経ったある日、俺はシアンから借りていた本を返そうと、シアンの部屋に向かった。
この時間、シアンは休憩の為に部屋にいるはずだ。
階段を降りて角を曲がり、少し進んだ先にシアンの部屋がある。
俺は扉の前に立って、数回ノックする。
だけど返事がない。「シアン?カナデだけど!」と呼んでみても、反応がない。
「あれ?いないのかな?シアン…」
そっと扉を押すと、内側へとゆっくり開く。
「鍵が掛かってないってことは、すぐに戻って来るのかな…」
扉の外で待ってようかと悩んだけど、本を置くだけだからと恐る恐る部屋の中に入った。
必要最低限の物しか置いていない質素な部屋。
広さは俺の部屋と同じぐらいだ。
「物が少ない。シアンらしいや」
そう呟きながら大きな机の前に行き本を置く。机の上に紙とペンを見つけて、一言書いて置こうと手を伸ばしたその時、廊下から話し声が聞こえてきた。
俺は、咄嗟に机の下に潜り込んで椅子を引いて隠れる。
ーーあっ…何やってんだよ、俺っ。思わず隠れちゃったけど、別に隠れることなかったよね。
そう思ったけど、アルファムとシアンが部屋に入って来てしまい、出るタイミングを逃してしまった。
ーー珍しい。アルがシアンの部屋に来るなんて…。
アルに見つかると絶対に怒られる!と仕方なく息を潜めて気配を消す。
盗み聞きをしてるようで悪いけど、二人の話に耳を澄ました。
「この前の子供騒ぎは困惑しましたね。でも、再びアイリスのような女が現れるかもしれません。そうならない為にも、カナデ様との子供のことを考えられてはいかがですか?」
「子供…か。あの騒ぎの後にカナに聞いたのだがな…。もし男でも産めると言ったらどうする?と」
「それでカナデ様は何と?」
「あいつは、産むと即答した。腹に宿すのも、産むのも、女の数倍辛いぞと言ったが、それでも俺との子供なら欲しいと…」
「なら、決断されてはどうでしょう。カナデ様がそのように仰って下さるなら…。お二人の間に子供が出来れば、アイリスのような女も出て来ないでしょう」
「それはそうなのだが…。カナの身体が心配だ」
俺は、激しく鳴り始めた胸を押さえて荒い呼吸を繰り返す。
今、二人は何の話をしてるの?
子供?俺とアルで、子供が作れるの?
この世界では、そんなことが出来るの?
出来るなら俺は、アルとの子供が欲しい!
「アル!」
居ても立ってもいられなくなった俺は、勢いよく椅子を押しのけて、机の下から飛び出した。
「カナ!?何でここにっ!」
「あっ、ごめん…っ。シアンに本を返そうと…。ところでっ、今の話って…!もしかして俺でも子供が産めるのっ?」
部屋の中央に立つアルファムの傍に駆け寄ると、アルファムの腕を掴みながら聞く。
アルファムは、ものすごく渋い顔をして、「俺としたことが。気配に気づけなかった…」と息を吐いた。
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