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その日の夜、いつもの様にアルファムの腕の中で眠りについた。
だけどローラントのことが気になって、全く眠れない。
俺が何度もごそごそと動くせいで、アルファムを起こしてしまったらしく、頭上から低く囁く声がした。
「眠れないのか?」
俺は、アルファムの胸に埋めていた顔を上げる。
窓から差し込む月明かりに、アルファムの綺麗な顔が浮かび上がる。
「…うん。ごめんね、起こしちゃった?ローラント、もう着いたかな…」
「まだ少しかかると思うぞ。そんなに心配せずともローラントは大丈夫だ。俺の弟だぞ。とてもしっかりしている」
「うん、そうだね」
「カナ、睡眠不足は腹の子にもよくない。だから少しでも眠れ。暑くはないか?」
「ううん…アルの腕の中、とても気持ちがいいよ」
「そうか。朝には、腕と背中の火傷もすっかり治っているだろう。おやすみ、カナ」
「おやすみ…アル」
俺の鼻、頬、瞼を順番に口づけて、最後に唇にキスをする。
すぐに離れる唇を舌を伸ばして舐めると、クスリと笑う気配がして、アルファムがもう一度唇を合わせた。
朝になってもまだローラントから連絡が来てなくて、おろおろと心配する俺に、アルファムが笑って言った。
「まだ連絡が無いのは当たり前だ。今より少し前に、ようやく着いた頃だと思うぞ」
「そう…。ローラント、ベアトリクスさんに会えたかな…」
「…そうだな、会えてるといいな」
アルファムの優しい声に、俺は勢いよく顔を上げる。
部屋の中を行ったり来たりしていた俺は、「落ち着け」とアルファムに抱きしめられていた。
そして、今のアルファムの言葉に、感動して嬉しくなったのだ。
アルファムは、幼い頃から、よく命を狙われていた。
アルファムの命を狙う者は、一人や二人では無かったと聞いた。
その中でも、頻繁にアルファムを亡き者にしようと企んだのは、ベアトリクスさんだ。
アルファムを何度も傷つけ、アルファムの食事に毒を盛った。
そして、毒が入ったアルファムの食事を、アルファムのお母さんが間違えて食べてしまった。
毒の知識も耐性も無かったアルファムのお母さんは、苦しみながら亡くなったそうだ。
『毒を口にしたのがアルファムじゃなく、私で良かった』と言って。
このことを、アルファムと想いが通じた時に、教えてくれた。
眉一つ動かさずに淡々と語るアルファムを見て、俺の胸がひどく痛んだのを覚えている。
ベアトリクスさんは、アルファムにとっては母親の仇だ。
その上、俺やお腹の子の命まで奪おうとした、憎い相手だろう。
なのに、そんな優しい言葉が出るなんて…。
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