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「カエン…よく寝てるんだけど。どうしよう…」
「無理に起こさなくてもいい。皆にカエンの姿を見せられたらそれでいい」
「うん…」
俺の腕の中で、すやすやとよく眠るカエンを、俺は愛しい思いで見つめた。
今朝はいつもより早く起きて食事と着替えを済ませた。
そして正門の前に広がる広場に突き出たバルコニーの奥の部屋で、アルファムと俺とカエンでお披露目の時まで寛いでいた。
初めは機嫌よく声を出していたカエンだけど、朝が早かったせいもあって、もうすぐお披露目の時間だという時になって、眠ってしまった。
カエンに、炎の国の民を見て欲しかった。
城から望む街並みを見て欲しかった。
まだあまり見えてないかもしれないけど。
でも眠ってしまったものは仕方がない。
アルファムの言うように、無理に起こすのも可哀想だ。
それに、カエンは起きていても寝ていても可愛い。だから、皆に見てもらうのに不都合はない。
本当にカエンが可愛過ぎて困る。
俺は、カエンが何をしても怒れない気がする。
でもそこは、パパであるアルファムが、しっかりと怒ってくれるだろう。
だから俺は、カエンを甘やかす役だ。
「カナ、先に俺が出る。俺が呼んだら、カエンを連れて出て来てくれ」
「うん。すごい数の人達が集まってるね」
「ああ。近隣の街からも人が集まって来てる。なにしろ王子が産まれたのだ。ここ最近の炎の国は、俺とおまえの結婚、王子の誕生と良いことが続いている。ますます活気づいて国が栄えるぞ」
「だといいなあ。アル、俺も頑張るからねっ」
「おまえはそこにいるだけでいい。と言っても聞かぬからな。困った后だ」
アルファムは、ふっと目を細めると、俺の唇に口づけてバルコニーへと出た。
途端に歓声が沸きあがる。
アルファムは国民に人気がある。
炎の国の象徴であるかのような赤い髪、煌めく宝石のような緑の瞳、整った綺麗な顔、がっしりとした大きな身体、そして傍に寄ると緊張してしまう威厳がある。
ーー正しく王族だよな。そんな人の傍にいるなんて、不思議だな…。でも俺は、アルに緊張したりしない。だって、アルの可愛い一面を知ってるから。
俺だけしか知らないアルファムの姿を思い出して、思わず笑いが漏れる。
俺の笑い声で、カエンが目を覚ました。
「あー」
「あ、起きちゃった?ごめんね」
俺に向かって手を伸ばすカエンの頬に、そっと口づけた。
「でもちょうどよかった。もうすぐ呼ばれるよ…」
「カナ!こちらへ」
「あっ、はい」
バルコニーから、アルファムが俺を呼ぶ。
俺は椅子から立ち上がると、カエンをしっかりと抱いて、バルコニーへと足を踏み出した。
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