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番外編 角ぐむ
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「つまんない」
俺はそう呟いて、長い廊下をとぼとぼと歩いた。
俺は、この炎の国エンの王子だ。
そしてこの国の一番偉い人が、俺の父さまだ。
誰もが父さまに会うと、身体を固くして頭を下げる。
だって王様の父さまは、身体が大きくて怖くて、燃えるような赤い髪できれいな顔をして、ほんとうにかっこいいんだ。
俺は父さまのようになりたい。
だけど俺が似ているのは緑の目と顔だけで、後は母さまに似ている。
俺は、自分の髪の毛を引っぱって、また「つまんない」と呟いた。
母さまもきれいだけど、男なのに小柄で色白で、まるで女の人みたいだ。
そしてめずらしい黒い髪をしている。
その母さまに似て、俺も髪が黒い。
父さまやリオは、「黒はとても尊い色だ。その尊い黒を受け継いだことを誇りに思え」といつも言う。
だけど俺は、こんな地味な黒よりは、父さまのような明るい赤がよかったんだ。
いつも考えてることをまた考えて、ただでさえ面白くなかった気持ちが、もっといやなものになる。
俺はリオの部屋の前で足を止めて、少しは練習の相手になるリオに魔法を見てもらおうと、部屋の扉を開けた。
「リオー!いるー?」
中に入りながら声をかける。
だけど返事がない。それもそのはず、部屋には誰もいない。
「なんだよう、遊んでもらおうと思ったのにっ。もしかしてうんこ?」
部屋を走って横切り、トイレのドアを開ける。
でも誰もいなくて、部屋の中のドアというドアを全部開けたけど、リオはいなかった。
「もうっ、つまんないっ」
俺は、これでもかというくらい、ほっぺをふくらませて怒った。
そしてふと、机の上に大きくて丸いパンがあることに気づいた。
俺は、面白くない気持ちをてのひらに込めて、パンに向かって力を飛ばした。
俺のてのひらから赤い玉が出て、見えない速さでパンに向かって飛んだ。
瞬きをして目を開けると、パンが真っ黒に焦げて、細く白い煙が出ていた。
「こんなんじゃあ、すっきりしない」
またほっぺをふくらませて部屋を出ようとすると、ちょうど戻って来たリオとぶつかった。
「いたっ」
「うおっ!あっ、カエン様。俺に用事ですか?」
「つまんないからもういい」
「はあ…、あっ!おっ、おっ、俺のっ、パンがあ…っ!まさかカエン様っ!」
「知らないっ!」
リオが伸ばした手をすり抜けて、俺は思いっきり走った。
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