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城を出ていくつもの建物を通りすぎて、敷地のはしっこにある石で作られた古い建物に入る。
グルグルと回る階段をいっぱい登っていくと、一番上に部屋がある。
その部屋の窓から、俺は外を見た。
俺の住んでる城は、この辺りのどの建物よりも高い所にある。
城の一番上にある部屋が一番高いけど、ここは二番目に高い。
だから遠くまで、よく見えるんだ。
俺はここが好きで、つまんない時には来て外を眺めたりする。
本当は危ないから入っちゃだめな所なんだって。
でも、どんなに強い魔法をかけて入れないようにしたって、俺には簡単に開けれちゃう。
だって俺は、炎の国で一番の魔法を使えるから。
父さまは、本気で相手してくれないから分かんないけど、たぶん父さまよりも俺の方が強いんじゃないかと思ってる。
でも俺は、この国で一番じゃなくて、世界で一番強くなりたい。だから、もっと魔法を練習したいのに、俺より魔法を使える人がいなくて、ちっとも練習ができない。
父さまに教えてもらいたいけど、いつも「忙しいから今度だ」と言って、相手をしてくれない。
「ほんとにつまんない。何か面白いことないかなあ」
「カエン」
いきなり呼ばれて、俺はびっくりして飛び上がった。
後ろを向くと、母さまが困った顔で両手を広げている。
「カエン、おいで」
「うん…」
俺は、母さまの腕の中に飛び込んだ。
母さまの黒い髪は好きじゃないけど、母さまは大好きだ。
いつも優しくて、抱きしめられるといい匂いがして、うれしくなる。
父さまの赤い髪や大きな身体や強そうな所は好きだけど、父さまは怖いからいやだ。
とくに俺が、母さまに今みたいにくっついてると、怖い顔で睨むんだ。
「どうしたの。何か嫌なことでもあった?」
「だって、俺、もっと魔法を強くなりたいのに、みんな教えてくれないんだもん!父さまも忙しいって教えてくれないんだもん!」
「そっか。この国じゃ、カエンが一番強い力を持ってるからね。アルも本当に忙しいし。ごめんね…、俺が教えてあげられたらよかったんだけど…」
悲しそうな顔をした母さまのほっぺを、俺は両手でぎゅっとする。
「カナっ、カナはあやまっちゃだめ!カナのことは、俺が守ってあげるからね!むりしちゃだめだからね!」
「カエン…。ふふ、ありがとう。カエンは立派な騎士だね」
「うん!リオよりも強いよ!」
「そのリオには謝ろうね。リオはさ、どんな時でもカエンの傍を離れない、信用できる味方だよ」
「…カナがそう言うなら、あやまる…。もやもやしてたから、あたっちゃったの」
「うん。今は?まだもやもや?」
「ううん。カナにぎゅってしてもらったら、なおっちゃった」
「よかった」
にこりと笑う母さまのほっぺに、ちゅーをする。
いつも父さまがしてるから、俺も母さまが傍にいる時はしてるんだ。
ほんとは父さまみたいに口にしたいけど、前に父さまの前でした時に、すっごく怖い顔で怒られたから、もうしない。
だって、あの時の父さまは、ほんとに怖くて、俺は思わず泣いちゃったんだ。
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