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すぐ目の前に、父さまの優しく微笑む顔が見える。
細い指に頬を撫でられて横を向くと、母さまが目に涙を浮かべて笑っていた。
「カエン、おまえはすごい男だ。その年でそんなことが言えるのは、立派だ。俺の自慢の息子だな」
「カエン…ありがとう。俺を庇ってくれたんだね。すごく嬉しい。ありがとう…」
「父さま…カナ…」
俺は、両手でごしごしと顔を拭くと、ぽかんとこちらを見上げているリリーを見た。
「父さま…、もう大丈夫だから降ろして」
「そうか」
父さまが、俺を降ろして頭をぽんと撫でた。
俺は、リリーの前に立つと、リリーの赤くなった手首に触れて謝った。
「リリー、ごめんね。痛かったよね。中庭にね、泉があるんだ。その泉に手首を浸すと、赤いのも痛いのもすぐに治るから、一緒に行こ?」
リリーは、ぼんやりと俺を見ていたけど、すぐにハッとして下を向いた。
「…カエン、私…ひどいこと言っちゃった…。だからカエンが怒っても仕方ないの。ごめんね…。カエンのお母さまも、ごめんなさい…」
ぽたりぽたりと地面に涙を落とすリリーの頭を、母さまが優しく撫でる。
「リリーも優しくていい子だね。ちゃんと悪いと思ったら謝れる。俺は大丈夫だよ。リリーが謝ってくれたからね。それに、これがいいとか嫌だとか思うのは個人の自由だから、嫌だと思ったことは、はっきり言ってもいいんだよ。でもまあ、一応、相手を思いやる気持ちも持ってようね。リリーは今からどうする?部屋に戻る?カエンと中庭に行く?」
「…中庭に行きたい」
「うん、じゃあ行こうか。カエン、案内してあげて」
「うん。こっちだよ」
俺は、リリーの手を引いて歩き出した。
リリーは、まだ少し下を向きながらついてくる。
俺達の後ろから、父さまと母さま、リオもついてくる。
広場から一旦城の中に入り、長い廊下を進んでまた外に出る。
外に出たそこは、色んな色の花や緑がいっぱいの、母さまも俺も大好きな中庭だ。
下を向いていたリリーが、ようやく顔を上げて、「わあっ」と声を上げて笑顔になった。
「ふふっ、綺麗でしょ?こっちに来て」
俺は、リリーの手を引いて泉に連れて来る。
泉の縁にリリーを座らせると、水の中に手を浸した。
「ほら、リリーも入れてみて。冷たくて気持ちいいよ」
「うん」
リリーが、赤くなった方の手を水に浸ける。
澄んだ水の中で、リリーの赤くなった所が綺麗に治っていく。
「あっ」
「どうしたの?」
「カエンが言ってた通りだわ。もう痛くない」
「ほんと?よかった」
俺がにこりと笑うと、リリーも俺に笑い返した。
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