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夜中に喉が渇いて起きた。
ベッドから降りて、机の前に行く。
机の上に置いてある容器からコップに水を注ぐと、一気に飲んだ。
ふうっ、と息を吐いて、ベッドに戻ろうとすると、扉の向こうから物音が聞こえてきた。
扉の向こう側は、父さまと母さまの部屋だ。
俺の部屋は、二人の部屋と扉で隔てられてるだけで繋がっている。
この部屋は、もともとは母さまの部屋だったんだって。といっても、父さまと母さまは、ずっと同じ部屋で過ごしてるから、あまり使われてなかったみたいだけど。
俺は、扉をそっと開けて隣の部屋を覗いた。
部屋の中は暗いけど、月が明るいからよく見える。
ベッドには、父さまが寝ている。でも母さまがいない。
おしっこ?と首を傾けると、頭に風が当たって振り向いた。
ベランダに続く窓が開いていて、そこから風が吹いてくる。
母さまは、ベランダで空を見上げていた。
「カナ…なにしてるの?」
俺の声にびっくりしたのか、母さまが勢いよく振り向いた。
目を丸くして、ベランダに出た俺の傍に来る。
「カエンこそ…どうしたの?怖い夢でも見た?」
「ううん、違うよ。喉が渇いて起きたの。水を飲んでたら、物音が聞こえたから気になって来たの」
「そっか、心配してくれたんだね。ありがとう」
「カナ、眠れないの?」
母さまは、俺と目線を合わせると、俺の頬をするすると撫でて微笑んだ。
「うん…なんだろ?なんでか目が冴えちゃって。アルの寝息聞いてたら寝れるかなあと思ったけど、駄目だった」
「父さまは、よく寝てるね」
「アルは疲れてるからね」
「じゃあさ、カナ、俺と一緒に寝る?眠れるかもしれないよ」
「そうだね。アルが『自立を促す』とか言って、カエンが五才になった途端に一人で寝させるようにしちゃったからね。俺はまだまだカエンと一緒に寝たかったのに…」
母さまが、眉毛を寄せて難しい顔をする。
俺は、母さまの眉毛の間のシワを指で押して笑った。
「俺は一人でも平気だよ。でもカナが一緒に寝たいなら寝てあげる!」
「うん、寝たい。ありがとうカエン。久しぶりに、アルとカエンと俺の三人で寝よう」
「うん!…あ、朝起きたら父さまが怒るかな?」
「なんで?」
「俺とカナの邪魔をした!って」
「あー…言いそう。でも俺が三人で寝たかったって言えば大丈夫だよ」
「父さまは、カナに甘いからなあ」
「うん、いつも言うことを聞いてくれる。本当に感謝だよ」
母さまが、首を伸ばして部屋の中の父さまを見る。
父さまは、特別な笑顔で母さまを見るけど、母さまも、特別に優しい目をして父さまを見るんだ。
二人は本当にすごくお互いが大好き。
もしも片方が欠けてしまったら、残された方はどうなるのだろう?と思わず悪いことを考えて、俺は慌てて首を振った。
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