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医師と入れ替わるようにリオが入って来た。
大きな籠を持っていて、中の物を出して机に置いていく。
「カナデ、大丈夫?疲れたのかな?薬を飲むための水と、温かいお茶と甘い果実を持って来たから。食べれたら食べて」
「うん、後で食べるよ。ありがとうリオ」
母さまは、水の中に薬を入れて、全部飲み干した。
すごく苦そうな薬だし、俺は薬が嫌いだなぁと見つめていると、母さまと目が合った。
「カエン、薬を飲んだしもう大丈夫だよ。ほら、魔法や剣の練習をするなら行っておいで」
「嫌だ。カナが心配だからここにいる」
「え?練習はいいの?そっか…。カエンが傍にいてくれるなら、安心して休めるよ」
「でしょ?俺、何でもするよ!」
「じゃあ一緒に寝てくれる?」
「うん!」
母さまが、ベッドの端にずれて布団を持ち上げる。
俺は、靴を脱いでベッドにあがると、母さまの隣に寝転んだ。
「アル。カエンがいてくれるから、安心して仕事に戻って。来客があったからやる事がたまってるだろ?薬も飲んだし寝てれば治るから」
「…じゃあ行ってくる。すぐに終わらせて戻る。カエン、カナを頼んだぞ」
「わかった、父さま」
俺は、身体を起こすと、父さまの目を見て頷いた。
父さまが、母さまにキスをして、リオを引連れて出て行った。
「カナ、何か飲む?それとも食べる?」
「んー、じゃあお茶を飲もうかな。すごくいい匂いがしてくる…」
「うん。カナの好きな、果実が入ったやつだね」
俺はベッドから飛び降りると、カップに湯気の立つお茶を注いだ。
カップの取手を持って、ゆっくりと零さないように母さまに渡す。
「はい、カナ。熱そうだから気をつけてね」
「ありがとう」
母さまは、上半身を起こしてカップを受け取り、何度も息を吹きかけてから飲んだ。
「あつ!」と言いながら、少しずつお茶を飲み干す。
「美味しかった。じゃあ少し休もうかな。カエン、おいで」
母さまが、寝転んで俺に向かって両腕を伸ばす。
俺は、母さまの腕の中に寝転んだ。
母さまの胸に顔を寄せて、息を吸い込む。
母さまは、いつもほのかに甘い匂いがする。俺は、この匂いが大好きなんだ。この匂いに包まれると、すごく幸せな気分になるんだ。
「カナ、俺の元気をあげるから、早く元気になって」
「うーん…、元々元気なんだけどな。でも、カエンのおかげで、すっごく元気になってきた!」
「ほんと?」
「ほんと!眠るともっと元気になるよ。俺もカエンも。だから少し寝ようか。おやすみカエン」
「うん、おやすみカナ」
母さまの腕の中は、いつも暖かくて心地好い。
俺は、十を数えるうちに眠ってしまった。
退屈でつまんない時もあるけど、とても穏やかで幸せな毎日。
ずっとずっと、こんな日が続くといいなあ…。
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