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すぐに扉の外から声がかかり、リオが入って来た。
俺は、もたれていた椅子から身体を起こして座り直す。
「リオ、休んでるところを悪い。シアンから聞いた?」
「はい。聞きました。シアン様は、今から北の出身者を集めて話を聞くと言ってました。俺にはカエン様と手紙を調べるようにと…」
「うん。ここにあるのがその手紙。イグニスの森の詳しい場所が書いてあるか調べて欲しい」
「わかりました」
リオが、俺の向かい側の椅子に座り、手紙を調べ出した。
俺も他の手紙を取り出して、丁寧に見ていく。
たいていの手紙の中身は、父さまのこと。
でも、俺のこともたくさん書いてある。
『カエンは本当に可愛い』
『カエンが俺とアルの子供で良かった』
『大きくなるにつれて、アルにそっくりになってきたね。俺はとても満足だよ』
『出来れば顔だけじゃなく、髪もアルに似てれば良かったね。俺の髪に似てしまってごめんね、カエン。この世界では珍しく尊い黒髪だとしても、本当はアルみたいな赤い髪が良かったよね。カエンが幼い頃、そう言ってたことがあったね。俺は本当に申し訳ないと思ってたんだ』
「違う…っ」
「カエン様?」
俺は、手紙を離すと両手の拳を強く握りしめた。
子供の頃の俺を殴りたい。
なんで、父さまみたいな赤い髪がいいなんて言ったんだろう。
母さまには直接言わないようにしていたけど、何度か聞いてしまったことがあるはずだ。
一度、母さまが直接聞いてしまったことがあった。その時の母さまの顔は忘れない。
母さまは、優しく笑っていたけど、傷ついた顔をしていた。
その顔を見た俺も、とても胸が痛んだことを思い出した。
「リオ…俺さ、カナに謝らなきゃいけないことがある」
「何かありましたか?」
「俺、小さい頃、カナの気持ちも考えずに、黒髪は嫌だ、父さまみたいな赤い髪がいい…って言ってたんだ」
「知ってます。俺も聞きましたから」
「カナも何度か聞いてると思う。でもカナは、優しいから、ごめんねって言ってた。俺の髪に似てしまってごめんねって…」
「カナデは、アルファム様は当然ですが、カエン様のことも大切に思ってましたから。カエン様が心配するほど、気にはしていなかったと思いますよ」
「そう…だと、いいな…」
母さまの態度からも、この手紙からも、充分に伝わってきた。
母さまが、深く俺を愛してくれていたことを。
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