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「カエン、心配かけてすまなかったな。俺は、カナを連れて中央の城に戻ろうと思う」
「え?本当に?よかった…。父さま、ありがとう」
皆との食事を終えた後、すぐに母さまがいる部屋に戻ると思っていた父さまが、席を立たずに考え込んでいた。
どうしたのかと見ていると、いきなりぽつりと言ったのだ。
「じゃあ明日の朝、すぐに出ようよ。いいかな?」
「わかった。城に戻ったら、カナのことをすぐに公表してくれ。五日間だけ、民の弔問を受け付ける。それが終わるとすぐに海辺の城へ連れて行く。…それでいいか?」
「いいよ。父さまは、そのまま海辺の城に残るの?」
「いや…、カナの髪の毛と共に、この家でしばらく暮らそうと思う。なあカエン、たまに会いに来てくれるか?」
「もちろん会いに来るよ!というか、もう少し気持ちが落ち着くまで城にいろよ。ここに来るのは、もっと先でもいいんじゃないかな。カナがいなくなって、父さままで離れたら寂しいよ…」
話してるうちに、急に寂しい気持ちになってきた。
母さまのことが悲しかったけど、父さまと二人で頑張ろうと思っていたんだ。
でも父さままで離れてしまうと思うと、堪らなく寂しい。
俺の周りには、ホルガーやシアンやリオや、その他の助けてくれる家臣がたくさんいる。
だけど、まだまだ父さまに教えて欲しいこともある。
だから、もう少しだけでいいから、俺の傍にいて。
俯いてしまった俺の頭を、父さまが優しく撫でる。
「そんな顔をするな。おまえなら立派にやれる。それにおまえの力になってくれる者が、たくさんいる。だから大丈夫だ」
「…でも、もう少しでいいから父さまに傍で見ていて欲しい。なあ、各国にもカナのことを知らせないといけないだろ?水の国と日の国からは、絶対にあの二人が駆けつけると思う。せめて、レオナルト王とサッシャ王が来るまでは、城にいて欲しい」
「ふむ…」
父さまが、腕を組んで考え込む。
シアンもリオも、黙って成り行きを見ている。
しばらくして父さまが、諦めたように息を吐いた。
「わかった。おまえの最後の我儘かもしれないしな。レオナルト王とサッシャ王がいる間は、城にいよう。だがその後は、ここと海辺の城を行き来しながら暮らすぞ」
「うん…。ありがとう。俺、父さまが安心して過ごせるよう頑張るよ」
「ああ、期待してるぞ。だが程々にな。あまり力を入れ過ぎるなよ」
「その時は、俺を注意しに来てよ」
「ふっ、そうしよう」
父さまが、やっと笑顔を見せた。
カナが亡くなってから、初めて笑顔を見せた。
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