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どんなに川底を捜しても、周辺一帯を捜しても、カナと男は見つからなかった。
でも見つからないということは、どこかで必ず生きている。
そう信じて、俺はカナを捜し続けた。
もしかするとカナと出会った海辺の城に戻って来るかもしれないと、俺は海辺の城でカナを待ち続けた。
そして本当に、カナは最初に出会った時と同じように、海辺の城近くの崖に落ちてきた。
あの死神のような男と一緒に。
カナと男を引き剥がしてカナだけを救い、男は海の中に消えた。
今度こそ安心だと、喜んだ。
カナを中央の城に連れて帰り、準備を整えて婚儀を執り行い、王妃にした。
その後は、多少の揉め事もあったが、難しいといわれる出産をカナが頑張ってくれて、子供も出来た。最高に幸せだった。
なのに、思いもよらない若さで、カナが死んだ。
俺はカナを離したくなくて、勝手なことをして皆を困らせた。
だけどカナの死を受け入れる決心がついて、カナと出会い埋葬した海辺の城で、穏やかに暮らし始めた時だった。
十七年前に海に沈んだ男が、再び現れたのだ。
カナが眠る石碑の前で、リオと話している時だった。
ふいに影が差して顔を上げると、黒いマントとフードを被った男が、前に立っていた。
「誰だっ!どうやって入った!」
「…あいつは、どこだ?」
「は?何のことだっ!」
リオが、立ち上がって腰の剣を抜く。
男は、チラリとリオを見ると、首を傾けた。
「んん…、おまえの顔は、何となく覚えている。あの時いたな…」
「俺はおまえなど知らん!」
「そこの赤い髪のおまえ。おまえのことは、忘れたことはないぞ。あいつはどこだ?」
「俺もおまえなど知らんぞ。それにあいつとは誰のことを言ってる?」
「あいつだよあいつ。俺がこの世界に呼び寄せた、黒い髪の生贄だ!」
「なにっ!?」
俺も立ち上がり、腰に帯びた剣の柄に手をかけた。
「…そうか、思い出した。十七年ほど前に、海に落ちた奴だな」
「そうだ。もう少しであいつを殺せそうだったのに、おまえに邪魔をされて出来なかったっ」
「しつこい奴だ。まだカナを狙ってたのか」
「早く出せ!あいつをっ!今度こそ息の根を止めてやるっ!」
「ふん、それは無理だ」
「なんだと?」
俺は、男の赤い目を睨みつけた。
その赤い目が、怒りなのか吊り上がっている。
「カナは、もうこの世にいない。おまえは、殺すことは出来ないぞ」
「…は?はあ?あいつ、死んだのかっ!」
男が、白い顔を赤くして叫ぶ。
俺の気持ちが落ち着いたと思っていたが、まだカナの死を口にするのは、とても辛い。
「おまえの目的は失われたのだ。早く去れ」
剣を抜いて、男に向けながら静かに言う。
往生際が悪いのか、男は更にしつこく聞いてきた。
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