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リオが、男を睨みつけながら口を開く。
「アルファム様、こいつは一体?」
「リオ、覚えてないか?昔に、カナと共に日の国へ行っただろう。カナが襲われた為に予定を早めて帰って来た。俺は国境の橋の上で出迎えた。その時に襲ってきた…」
「あっ!あいつかっ!えっ?あの後、再びカナが現れた時に海に落ちたと聞きましたがっ…」
「どうやら生きていたらしいな」
「なんとしつこい…っ!」
リオが、更に力を込めて剣を握り直す。
自分に向けられた剣先など目に入らない様子で、男が一歩こちらに近づいた。
「…ごちゃごちゃとうるさい。いつだ?いつ死んだのだっ?何年も前か?最近なのか?」
「おまえに教える気はない。早く去れ」
「おまえはこの国の王であろう。なぜこんな辺鄙な城にいる。本当に黒髪のあいつは死んだのか?ここに隠してるのではないか?」
「…それ以上カナのことを口にするな。殺すぞ」
俺は、カチャと音を立てて剣を構え直し、男の胸に突き立てる。
マントに触れた剣先を見て、男はようやく俺から視線を外し、首を巡らせて周りを見た。
そして、自分の背後の石碑に気づいて目を止める。しばらく眺めた後に、がくりと項垂れた。
「…これは…あいつの墓か。本当にいないのか…」
「だから最初からそう言っている。おまえの目的が果たされることは無い」
「長い間、訳のわからぬ空間をさ迷って、ようやくここに来れたというのに。確かにここに、あいつの気配を感じたというのに」
「カナの気配?」
男が、聞き捨てならないことを言う。
俺が聞き直すと、男が石碑を指差した。
「これだ。ここからあいつの気配を感じた。だが、ここに埋まっているのだとしたら、感じるのは当たり前だったのだ。しかしもう一つ、ここよりも弱いが、気配を感じる場所がある。おまえは、あいつが死んだと言うが、まだ諦め切れぬ。そこに確かめに行く」
「…どこだ、その場所は」
男がくるりと身体を回転させて、俺と目を合わせる。
「ここより遥か北に進んだ所だ。馬でも数日はかかりそうだ」
「アルファム様!」
リオが、男の首に刃を当てる。
ここより遥か北にあるとすれば、中央の城。
もしや、カエンの気配を感じ取っているのではあるまいな。
「こいつを野放しにしてはなりません!犯罪者です!捕らえましょう!」
「そうだな。十七年前のことではあるが、おまえはカナを殺そうとした罪人だ。捕らえて刑を言い渡す」
言葉を言い終わらぬうちに、男が、無言でゆっくりと右手を上げる。
俺が炎を出すよりも早く、男の掌からリオの腹へ向けて、黒い雷が放たれた。
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