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第二部 炎の国の王カエン
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リオの話を聞き終えて、俺の中に不安が広がった。
静かに立って窓辺に行き、窓に映る自分の顔を見つめる。
今の話からすれば、父さまはもう、生きてはいないかもしれない。
そしてその男は、ここへ来るかもしれない。ここへ来て俺を見つけると、母さまの代わりとして、殺そうとしてくるのだろう。
だって俺は、母さまと同じ黒い髪だから。
どうやら黒い髪の人間が、男が言うところの生贄として効果があるらしい。
「カエン様…、俺は危険だとわかりながら、アルファ厶様を置いてきたのです。申し訳ありません…」
背中の傷が痛むのに、リオが無理に身体を起こして頭を下げる。
俺は、安心させるように笑って言った。
「何も謝るようなことはしていないだろ。父さまに命令されたんだし、背中を斬られて危険な状態だったのに、遠い道のりを戻って来てくれた。おかげで、そいつが襲って来たとしても心構えと準備が出来る。ありがとうリオ。ここは俺やシアンに任せて、ゆっくり休んで。父さまのことも…」
「いえ、俺も動けます。少し休んだらアルファム様の所へ戻ります」
「駄目だ」
その時、扉が開くと同時に声がして、ローラントおじさんが入って来た。
リオの傍に来て、そっと肩を押して寝るように促す。
「話は外で聞いた。兄上の所へは、俺が行こう。ここには、カエンとシアンがいれば大丈夫だろう?」
「おじさん行ってくれるの?ありがとう」
「俺のたった一人の大切な兄だからね。すぐに発つ。数人兵を連れて行くけどいいか?」
「何人でも。もしその男が来ても、俺一人で充分足りる」
「まあそうだろうが、油断はするなよ。あとやり過ぎも」
おじさんが、今度は俺の傍に来て、笑いながら頭を撫でる。
俺は、どんなに怒ったり興奮していても、おじさんに頭を撫でられると気持ちが落ち着くんだ。
「おじさんも気をつけてよ。そいつと鉢合わせしないように…」
「ああ。少し遠回りになるが、東寄りを進んで行こうと思う。リオ、兄上のことが心配だろうが、今は休め。カエンのことが心配いらないのは、常に傍にいたおまえなら知ってるだろう。兄上は、この一年ほどカナデにつきっきりでカエンの成長を知らないからな。だから心配しておまえを寄越したんだろうが…」
「ですが、あの男の魔法は、この世界には無いものです。カエン様も知らない魔法です。いくらカエン様が強くても…っ」
「リオ」
俺は、静かにリオを呼ぶ。
「俺は、自分の力を過信してはいないよ。でも、世界で一番強いと自覚している」
「カエン様…」
そう。俺は強い。
子供の頃から魔法の力が強かったけど、ここ一年で更に強くなったんだ。
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