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寝息を立て始めた父さまを部屋に残して、俺は、母さまの石碑がある場所へと向かった。
石碑の周りの地面には、父さまとあの男が戦った跡が、あちらこちらに残っている。
男の言うことを信じずに、ここへ来て良かった。とりあえず父さまを助けることが出来た。
俺は、今更ながらに安堵の息を吐いて、石碑にそっと手を置いた。
「カナ、父さまは無事だよ。綺麗な赤の髪の毛が短くなっちゃったけど、短くても似合ってるよ、かっこいい。父さまの短髪姿、カナにも見せたかったなあ。逆に俺は、伸ばしてみようかな。カナはどう思う?カナも伸ばしたことなかったよね。きっと似合ってたのに…」
言い終わると同時にくらいに、柔らかい風が吹いて俺の頬を撫でた。
まるで母さまに撫でられた気持ちになって、とても母さまが恋しくなって、泣きそうになった。
「昔にカナを襲ったとかいう変な男も、俺が懲らしめてやったからね。カナと同じ黒髪だからと俺を狙って来たんだ。強かったけど、俺の方が強かった。でも父さまとは離れていたから、助けることが出来なかった…。今回は何とか無事だったから良かったけど。俺に守れる力があるのに、もし守れていなかったらとても後悔してた…。ねえカナ、俺の守りたいものを全て守るには、どうしたらいいかな」
俺は、石碑を抱きしめて目を閉じた。
母さまには、何でも相談できた。母さまはいつも、「カエンはすごいね」と褒めてくれた。
今日父さまに頑張ったと褒めてもらったけど、母さまにも褒めてもらいたい。
俺は王になるのだからと我慢してたけど、本当はもっと母さまに甘えたかったんだ。
また柔らかい風が吹いて、俺の周りをぐるぐると回る。
俺が顔を上げると、母さまと同じ俺の黒髪を優しく揺らして消えた。
「カナ…褒めてくれたの?ありがとう」
少し寂しかった気持ちが満たされて、俺は石碑を見て微笑んだ。
その時、表の方から騒がしい声が聞こえてきた。俺は、急いで表に向かった。
表の広場に、ローラントおじさんがいた。
父さまに吹き飛ばされたという九人の兵達も、腕や足を押さえながら座り込んでいた。
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