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九人の兵達は、腕や足にすり傷や打撲があったけど、たいした怪我はなかった。
それぞれ泉の水で治療して、部屋で休んでもらった。
とにかく死人が出なくてよかった。
父さまの怪我も防ぎたかったけど、命が助かっただけ良しとしよう。
俺は、ローラントおじさんに、父さまが眠っていることを伝えて、二人で父さまのいる部屋に戻った。
父さまは、まだ眠っていた。
「父さま…かなり体力を消耗したんだね。俺がここにいたらなあ…」
「もう終わったことだ。仕方がない。カエンはまだ王に成り立てで、やるべきことがあったのだから。今は兄上の早い回復を願おう」
「うん…」
「ところで、早く中央の城に戻らなくてもいいのか?」
「少しぐらいならシアンが何とかしてくれる。俺は、父さまが元気になるまで傍にいたい」
「そうか」
「ねえおじさん。父さま、中央の城に戻って来ないかな…。やっぱり一人にするの心配なんだ」
「戻らないと思うぞ。ここにはカナデが眠ってるしな。もうあの男みたいな危険な人物はいないだろう?大丈夫じゃないか?」
「そうだといいけど。父さまも強いけどさ、歳をとったぶん、魔法の力も弱くなってると思うんだ。だから今回こんな大怪我したんだと思う…」
「そうだな。それはあるかも。僕も年々魔法力が落ちてきてるよ。でも今は世界も平和だ。そうそう戦うことはない。僕は、兄上の望む通りに、ここで穏やかに過ごさせてやりたいと思うな」
「そっか…」
俯いた俺の頭を、ローラントおじさんが優しく撫でてくれる。
俺は、もっと母さまに甘えたかった。それと同じくらい、父さまにも甘えたかったんだ。だから母さまがいない今、父さまと過ごす時間が欲しかったのかもしれない。
「ここにいる間は、兄上とゆっくり過ごせばいい。そこに俺も混ぜてもらってもいいかな。いまや血の繋がった家族は、俺達三人だけだ。少しの間、国政から離れて過ごさないか。そんなことが出来るのも、たぶん今だけだろうから」
「うん…。少しだけならいいよね?父さまとおじさんの前では、王としてじゃなく、子供と甥でいてもいい…かな?」
「もちろん。久しぶりに甘やかしてやるよ」
「ふふっ、おじさんはいつも甘やかしてくれてるよ」
「そうだったかな。まあカエンは可愛い甥だからな」
俺とローラントおじさんの声がうるさかったのか、ベッドから父さまの唸る声が聞こえた。
俺とおじさんは、慌てて口に手を当てると、顔を見合わせて笑った。
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