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十日目を過ぎた頃に、中央の城から使いの者が来た。
こちらの状況は、父さまの護衛の為についてきた兵を二人戻して伝えてある。
しばらく滞在するとも伝えたのだが、送った兵と入れ替わるように到着した使いの者に、俺の中に不安が募る。
俺が面会の部屋に入ると、使いの者は、膝をつき頭を垂れて待っていた。
「遠くからご苦労だったね。どんな緊急の要件なのかな?」
「はっ!ゆっくりと過ごされている所を申し訳ないのですが、出来るだけ早く中央の城に戻って頂きたいのです」
「うーん…。しばらく滞在するとシアンに伝えてあるはずなんだけど」
「はっ!そのシアン様からのお願いでございます」
「はあ…っ。その緊急の要件って、なに?」
「申し訳ございません!我々は何も聞いておりませんので…」
「……そう」
俺は、少し苛立った。
どんな要件かもわからないのに、帰らないと駄目なのか?せっかく家族水入らずで過ごしていたのに。こんな風に過ごせるのは、もう最後かもしれないのに。
あの怪しい男は捕まえてある。世界も平和だ。
一体どんな緊急の要件があるというのか。
「カエン、早く城に戻れ」
「…父さま」
俺が黙って考え込んでいると、いつの間にか隣に来ていた父さまに言われた。
父さまの後ろのローラントおじさんも、頷いている。
「でも…」
「シアンが使いを寄越したのだ。余程のことだろう。中央の城が心配だ。早く戻れ。…その要件とやらが落ち着いたら、もう一度ここに来るといい。今度こそ、三人でたっぷりと過ごそう」
「カエン、兄上の言う通りだ。兄上の傍には、俺がしばらくついているから心配はいらない。シアンが困っているのだ。帰ってあげなさい」
「…わかった、二人がそう言うのなら。一旦帰るけど、またすぐにここに戻って来るから!父さまもローラントおじさんも待っててよ!」
「ああ。俺達はどこにも行かない」
「カエン、気をつけるんだよ。自分の力を過信し過ぎないように」
「わかってる!」
支度をするからと、使いの者を下がらせた。
俺が部屋を出ようとすると、父さまに呼び止められる。
「なに?」と振り向いた俺を、父さまが抱きしめた。
「カエン…立派な王になりつつあるな。俺は、いつもおまえを見守っているぞ」
「父さま…」
俺も父さまを抱きしめ返す。声が震えてしまったけど、涙は堪えた。
俺は、炎の国の王だ。人前で、もう涙は見せないぞ。
父さまとローラントおじさんに見送られながら、使いの者と護衛二人に挟まれて、俺はオルタナの手網を掴んで一気に空へと翔んだ。
小さくなった父さまとローラントおじさんに手を振ると、オルタナの横腹を蹴って中央の城へと速度を上げた。
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