アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
17
-
「これは…!」
街のかなり遠くから、立ち昇っている煙が見えていた。街の上空に着いて、俺達は呆然となる。
それほど大きくない街だが、ほとんど燃え尽くされている。
街の外れにある広場に人が大勢集まっているのを見て、そちらに向かう。
広場の端に飛翔馬を着地させると、数人が駆け寄ってきた。
「カエン様!助けてくださいっ!家が…全てが燃えてしまった…っ」
皆一様に、悲痛な様子で同じことを叫んだ。
それはそうだろう。一瞬にして日常が失われてしまったのだから。
シアンと兵達が、俺の前に立って、皆に落ち着くようにと言っている。
だけど泣き声や怒号が飛び交って、広場は混乱状態だ。
ふと一人の兵が走って来て、俺の前に膝をついた。
「カエン様、よく来てくださいました。俺はこの近辺を守っている衛兵です」
「そうか。何が原因でこうなったのかわかるか?」
「はっ!それが…。おいっ、こっちに来い!」
兵が後ろを向いて、大きく手招きをする。
俺より少し下くらいの少年が、恐る恐るという風に群衆から出てきて、兵の隣に膝をついた。
「この子は?」
「はっ!この街に住む少年です。おい、見たことを全て正直に話せ」
「は…はい…」
恐ろしいことに遭遇した上に、王族の前に出たことなどないのだろう。
少年は、可哀想なほどカタカタと震えていた。
俺は、しゃがんで少年と目線を合わせると、安心させるように微笑んだ。
「大丈夫。ゆっくりでいいから、何を見たのか教えて?」
「はい…っ」
赤茶色の短い髪と同じ色の目をした少年は、大きく目を見開くと、小さな声で話し出した。
「俺、朝から用事で隣の街に行ってたんです…。昼過ぎに帰って来たんですけど、珍しい人が街の方に入って行くのを見て驚いて…。悪いと思いながら後をつけたんです。だって恐れ多くて声をかけられなかったし…」
「どういうこと?」
少年は、俺の顔を見て、また目を伏せる。
「…あなたの顔を知った今なら違う人だったとわかります。でも俺は、街に入って行く人が、カエン様だと思ったんです。…だってその人も、あなたと同じ、この世界には一人しかいない黒い髪をしていたから…」
「なにっ?」
黒い髪…。ということは、やはりあの男の言う通り、他の世界から人が落ちてきたのか?
横で話を聞いていたシアンが、少年に尋ねる。
「そいつは、本当にカエン様と同じ、美しい黒髪だったか?染めているのではなかったか?」
少年は、シアンを見て首を大きく横に振る。
「違います。黒に染めるとどうしても斑になってしまいます。俺…カナデ様やカエン様の黒髪に憧れて染めようとしたことがあるからわかります…。周りにも、染めようとして綺麗に染まらなかった人がたくさんいます。その人は…その男は、確かにカエン様のように美しい漆黒の髪でした」
俺とシアンは目を合わせると、小さく頷いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
381 / 427