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先に捜索をしていた兵に情報を聞きながら、男を捜した。でも中々見つからない。
もうすでに遠くへ行ってしまったのか、或いはどこかに隠れているのだろうかと思い、捜索の範囲を広げた。
俺について来た三人の兵達にも、俺から離れて手分けして捜すように命令をする。
三人は、俺を一人にすることを気にしていたが、「おれはおまえ達よりも強いから心配するな」と言うと、三人とも頷いて走り去った。
俺も捜索を続けようとオルタナの手綱を握りしめて、オルタナが疲れていることに気づいた。
「そっか…。今日はずっと走りっぱなしだもんな。ごめんな。少し休憩をしよう」
俺はオルタナから降りて、首を撫でた。
オルタナが俺に擦り寄る。でも息が少し荒い。
風に乗って水の匂いがしてきたので、そちらの方へとオルタナを連れて向かう。
森に入り高い木立の間を抜けると、小さな湖に出た。
穏やかな湖面が、沈みかけた太陽の光に反射して、とても綺麗だ。
俺は、オルタナに水を飲ませようと、湖岸に近づいた。
オルタナが、首を曲げて水を飲む。
その様子を眺めていると、「あれ?」と声がした。
誰もいないと思っていたから、俺は驚いた。
咄嗟に剣の柄を掴んで振り向く。
俺から少し離れた湖岸に、誰かが立っている。
太陽の光が眩しくて、どんな人物かがよくわからない。
その人は、どんどんとこちらに近づいて、ようやく顔が見える距離に来たところで、足を止めた。
「おまえ…」
思わず声が漏れた。
見つけた。俺と同じ黒い髪の男だ。
街を燃やしたかもしれない男だ。
いろいろと聞きたいことがある。
俺は、逃げられないように静かに口を開いた。
「おまえは、誰だ?」
男が、首を傾ける。肩よりも長い黒髪が、さらりと風に揺れる。歳は、俺と同じくらいかもしれない。そして不思議な格好をしている。白いズボンに刺繍の施された濃い灰色の丈の長い上着を着て、腰に青い布を巻いている。
「あっ、君はこの国の王様だろう?さっき聞いた。君と間違えて、俺を王様だと思って声をかけてきた人から」
「…そうだ。俺はこの国の王、カエンだ。おまえはどこから来た?」
「それが…よくわからないんだ。気がついたら森の中に倒れててさ。知らない所だし、困ってるんだ。あてもなく歩いてたら街みたいな所に着いてさ。そこで誰かが俺のことを『 王様だ』って言ったんだよ。そうか、俺は王様なのかと納得しかけてたら、また別の人が『王様と違う。同じ黒髪だけど、長さも顔も違う。俺は即位式の時に拝顔してきたんだ。王様はもっと綺麗だった』だってさ。失礼だよね?俺も綺麗な方だと思うんだけど?」
男は湖面に自身を映して、顔を触っている。
確かに、男は綺麗な顔をしている。黒髪に母さまとよく似た琥珀色の瞳。
でもこの世界に、俺と母さま以外で黒髪の人はいないのだ。この男は一体…。
「俺の質問に答えろ。街を燃やしたのは、おまえか?」
「ごめんね?そうみたい…」
男は悪びれた様子もなく、俺の方を向いて笑った。
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