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ベッドの上で起き上がって背伸びをしていると、扉を叩く音がした。
「カエン様、起きていますか?」
「起きてるよ」
扉が開いて、シアンが入ってくる。
シアンに続いて使用人が、食事を持って入ってきた。
「おはようございます。疲れは取れましたか?」
「うん、大丈夫。ところでシアン…あの男はどうしてる?」
俺とシアンが話している間に、テキパキと机に食事を並べ終えた使用人が、頭を下げて出て行った。
俺はベッドから降りて椅子に座り、温かい紅茶を飲む。
シアンが傍に来て、半分ほど減った俺のカップに紅茶を注ぐ。
「あの男は、地下牢にてぐっすりと眠っております」
「…よくあんな所で熟睡出来るな。なあシアン。あいつをどう思う?」
「…街を燃やした悪人では?」
俺はパンをちぎって口に入れ、咀嚼しながら、バルコニーの手すりに止まった鳥を見る。
「俺も最初はそう思ったんだけどさ…。あいつと話してみて違う気がしたんだよな。何か理由があるんじゃないかと思ってる」
「カエン様がそう思われるのでしたらそうでしょう。あなたは人を見る目がありますから。詳しく尋問をすればわかります。これからされますか?」
「うん、そのつもり」
俺は両手を合わせると、本格的に食事を始めた。
食べ終わるまで、シアンが静かに俺の後ろで待っている。
食べ終わって両手を合わせたところで、再びシアンが口を開いた。
「ところで一つ、気になることがあるのですが。お聞きしても?」
「うん、なに?」
「あの男の腕の傷についてです。昨夜、泉の水にて治癒しましたので、今は治っております。あれは…何の傷ですか?」
俺は、ゆっくりと振り返った。
シアンが、まっすぐに俺を見ている。
その目を見ていると、下手な嘘はつけないなと諦めて、小さく息を吐いた。
「あれね…雷の傷。ちょっとあいつにやられそうになってさ…、まずいと思った瞬間、俺の身体から黒い雷が出た。あの怪しい男、本当に俺に自分の力を移してたんだ…」
「なるほど…。俺は、あの男が力だけでなく、自分の全てをあなたに注ぎ込んだように見えました。だからあの直後に死んだのかと…。雷を発した時に、何か異変はありませんでしたか?」
俺の心臓がドキリと鳴った。
シアンは本当に鋭い。でも、俺の心の内に起こったあのことは、知られたくない。あれは、いきなり黒い雷が出て、混乱してただけなんだ。きっと大丈夫だ。
だから俺は、首を横に振った。
「大丈夫。雷を上手く使えなくて戸惑っただけ。これは心強い俺の武器になると思う。だからもっと上手く扱えるように稽古するよ」
「…そうですか。では顔を洗って着替えてください。俺は地下牢の入口で待ってます」
「わかった」
俺は、頷いて席を立った。
顔を洗うために離れる俺の背中に、シアンの視線を感じて、また小さく心臓が鳴った。
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