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まだ陽が昇る前の明け方に、父さまがいる海辺の城に着いた。
いきなりの訪問に驚いた門番が、慌てて父さまを呼びに行く。
俺はハオランを連れて客室に行き、二人並んで椅子に座った。
「ねえ…カエン。勝手に入っていいの?」
「いいよ。だって俺はこの国の王様だよ」
「あ、そっか。カエンは威張ってないから王様だってこと忘れてしまう…」
「…それって、威厳がないってことか?」
「ちっ、違うよっ!親しみやすいって言うか…優しいって言うか…」
ハオランが顔の前で両手を振って慌てる様子が可笑しくて、俺はぷっと噴き出した。
「あははっ!わかってるよ。ハオランの反応が面白くてからかったんだ」
「カエン…ひどい…」
「ごめんな?そんな顔しないで」
「カエン、どうしたのだ?」
その時、扉が開くと同時に低い声がした。
俺とハオランが振り向くと、黒いガウンを羽織った父さまが立っていた。
俺はゆっくりと立ち上がり、父さまに頭を下げる。
ハオランも俺に続いて深く頭を下げた。
「父さま、突然来てごめん。…なんだか急に父さまに会いたくなって」
「そうか。おまえに甘えられるのは初めてな気がするな。おまえはいつもカナの方にばかり甘えていたからな」
「うん、そうだね」
「ところで彼は?」
父さまがハオランに視線を向ける。父さまの鋭い緑色の目に、ハオランの背筋が伸びた気がする。
俺はハオランの背中に手を添えると、ハオランを見て小さく頷いた。
「彼はハオランと言うんだ。父さま、彼も母さまと同じで、違う世界から来たんだよ」
「なに?だからこの世界では珍しい黒髪をしているのか。もしやカナと同じ世界から…」
「いや、違うみたいだよ。国の名前がカナがいたにほんと違う」
「そうか…。君はどういう所から来たのだ?」
ハオランが不安そうに俺を見る。
俺は微笑んで、もう一度頷いた。
「はじめまして。俺…私はハオランと言います。中華の国から来ました。なぜこの世界へ来たのかはわかりません…」
「ちゅうか…。カナがいた所とは違うのか…」
「はあ…。あの、先程から仰ってるカナとは…誰のことですか?俺と同じように違う世界からここへ来たんですか?」
「カエン、話してないのか?」
「うん、まあ…」
話そうと思いながら何となく話しそびれていたな…と、俺は頬を指で掻いた。
ハオランが俺と父さまを交互に見る。早く話してと言わんばかりの眼差しに、俺の頬が緩んだ。
「カナとは、俺の母さまだ。こことは違う世界の、にほんという国から来た」
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