アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
柔い痛覚 二 ☆
-
腕の中に異性が居る。それが今のスクラムの置かれた状況であった。女性となってしまったラプラソスは旧友の逡巡などつゆ知らず、安心する体温の中で眠りについている。スクラムはラプラソスのうなじを軽く細長い指で撫でた。ラプラソスは全く反応を示さず、眉ひとつ動かさない。
胸元にある掌は柔く、握ると前との大きさの差がよくわかった。骨も血管も浮き出ていないなめらかな白い肌に目を細め、スクラムはそのままラプラソスの髪に頬を埋める。肩につくかつかないかのその若葉の髪は陽の匂いをよく含み、そして女子の甘い香りも持ち合わせていた。スクラムは少しばかり後れ毛を薄い唇でつまみ、それから離すなどと意味のないことをし、それから彼もふつと瞼を落とした。
そうして、それから六日。経血も収まり、腹痛も解消して食欲も回復した頃。ラプラソスは最近ずっとしているようにジャードのもとへ経過観察に来ていた。扉をノックしてから返事を待たずして開く。そこには椅子に腰掛けながら本を読み、扉へ訝しげな目を向けていたジャードが居た。
「ジャード!」
「なんだ、お嬢さん」
「あれ、終わったよ!なんだっけ、セイリ?」
「む、そうか」
ジャードは机に本を伏せる。それから寝台へ腰掛けたラプラソスへ体を向け、身体に不調がないかを調べた。
「…うん、至って健康」
「よかったあ」
ここ一週間、全く変わらない典型文を交わしたのち、しばらくしてからジャードはラプラソスの首筋に重圧な掌を沿わせ、そのまま椅子から立ち上がった。彼を見上げるラプラソスの肩を軽く押し、そのまま倒す。ただシーツへと落ちる前に肩から首にかけてを掌で支え、それからゆっくりと負担がないように降ろした。
「なに?」
「…本当に終わったんだな?」
「うん、おかげさまで…」
ラプラソスは濃い紫とマゼンタの交差する瞳でジャードを見詰める。ジャードの太い指がラプラソスの柔い唇に触れるとくすぐったいと口角を上げて身をよじった。
「なあに、くすぐったいよう」
「…頬も、柔くなったな」
「ん?うん、女の子ってどこもかしこもやわらかいものね」
頬に掌を当て、ジャードはそのまま額を合わせる。そして息がかかるほどまでになるとラプラソスは息を止めた。彼女なりの配慮であったのだろう、結ばれた唇をジャードの舌が破った。
「!」
「…ふふ、警戒心のない奴だ」
「っや、は、なに…」
その疑問の声を食むようにジャードは唇を合わせる。いきなりのことに混乱したラプラソスは息ができず、ただ自分の上に覆いかぶさるジャードの胸板を女子の弱い力で叩く。勿論それは彼に届かず、いよいよ舌がラプラソスの舌と触れる。ラプラソスは目を白黒とさせ、酸欠になりながら縋る先を失い、服をしわができるほど握ってばかりいた。
「っは…なに…?くる、しか、た…」
「ん…すまない…鼻で息をするんだ……」
「あ…そっかあ……」
口を離せばラプラソスは息を浅くし、無知ながらも今の行為を理解しようと試みていた。ただ、それが特別な行為とは認識できなかったようで、ラプラソスは口元を拭い、そのまま眠りにつこうとしていた。朝の二度寝は彼女の日課であるものの、ジャードはそれを赦さず今度は耳に舌を這わせる。
「ひっ…ぁ…?」
「寝るんじゃない、まだある」
「なに、するの…」
ジャードは答えず、少しばかり口角を上げてラプラソスの胸のふくらみをセーターの上から少し揉み、その頂を指の横でつまむようにした。
「ん、ぅ…や、だ、そこ、」
「痛いか」
「腰、へんな感じ…」
「…そうか」
すっかり耳まで真赤に染め、ラプラソスは息を弾ませる。ジャードはそれに愉悦を覚えながらそのふくらみを軽く撫でていた。それでも快楽は来るらしく、ラプラソスは少し腰を震わせる。
「…ね、おれ、なんか悪いことした…?」
「ん、全く?」
「じゃあ…なんで、折檻するの…」
「折檻?」
ジャードは掌を止め、涙を浮かべ始めるラプラソスの眉を親指の腹で撫で、頬に掌を沿わせた。いよいよその掌に温いものが落ち、冷やされながらシーツに滲みを作る。
「…おい、泣くな…」
「だっ、て…なんか、胸、ぎゅってするんだもの、触ると…」
「そうか…なら、少し、深呼吸しよう」
「っ、うん……」
ラプラソスは口を少しばかり開き、そのまま深呼吸をする。息を吐くたびに涙はジャードの掌を濡らした。
「…ね、あれして、あれ…」
「どれだ、」
「あの、口ふにってするやつ、べろ入れちゃやだよ…苦しいんだもの……」
「…ん」
ジャードは少しかさつく唇をラプラソスの唇に当てる。本当に当てる程度のもので、ラプラソスはそれが落ち着くのか眉間のしわを消していた。
「…舌、出してくれないか」
「やだ…苦しいから…」
「…苦しくないようにする、だから…」
「…わかったよう…」
慣れぬ仕草で舌を出し、ラプラソスは息を乱し始める。先ほどのことで快楽を植え付けられたラプラソスは無自覚のうちに昂っていた。ジャードはその舌に自らの舌を当て、絡めるようにした。ラプラソスが息をつこうと口を開いた隙に、付け根まで舌を這わせる。
「んや、やだって、」
「口を開いたままで…息をかけていいから」
「ん、ひぁ…ふ、あ……っ、ぅ…」
ラプラソスは喉へ流れてくるジャードと自分の唾液に目を眩ませる。ジャードはそれを察し、軽くラプラソスの顔を起こしてむせぬようにした。それから流れ出る唾液を受け止め、口を離して飲み込む。嚥下する音がラプラソスの耳にも聞こえ、長い睫毛に涙を溜めながら上目でその様子を眺めていた。
「…かわいいな」
「はっ…は……かわ、く、ない…」
「今は女子なんだから、素直に受け取っておけ」
「ん…」
ジャードは息を弾ませるラプラソスの唇を濡らす唾液を指で拭う。それから再び胸を撫で、ラプラソスはそれをまた熱のこもった瞳で見ていた。
「…ね、苦しくしないでね…」
「さっきのは苦しかったか」
「胸がぎゅうぎゅうするから……」
「…ああ……」
未だその感情を理解し得ないラプラソスは、腰が勝手に震えるのを不思議に思っていた。また、苦しいはずであるのにそれを再び求めてしまう己に対しても疑問を抱いている。
「…ね、」
「ん?」
ジャードの掌は片方胸にあり、もう一方は臍のあたりまで降りてきていた。
「なんで…これ、やなのに…ずっとしてほしくなるの?」
「なっ…ああ、ええと…それは…そうだな、気持ちに身体が追いついていないんだ」
彼らしくなく小さく声を上げて一瞬間静止し、ジャードは言い訳がましく答えた。
「気持ちに?」
「そうだ…気持ちではそれを好むのに身体がそれを認めない、というようなものか…?」
「そっか…」
おそらくラプラソスはジャードの発言を理解していなかったが、わかったような振りをして続きを待った。ジャードの掌は彼女の腰にあり、動きやすい履物を片手で降ろしていく。
「…?」
「…抵抗しないのか」
「これって、抵抗しなきゃだめなこと?」
「……弱ったな…」
ジャードはラプラソスの胸に頬を埋める。初めての視点から見、ラプラソスは彼をまじと見た。戸惑うジャードも珍しく、彼女は表情を崩して微笑む。
「なんかジャード、今日変なの」
「変か…」
「いつもみたいに締まってなくて、いろんな顔見せてくれるもの」
「…そうか…」
顔に出ていたかとジャードは自らの額に掌を当てる。ただ、ラプラソスはそれをおもしろいと言って微笑んだ。ジャードは溜息を吐きながら下着まで脱がせ、その下着が少しばかり濡れていたことを指で確かめた。
「う、すうすうする…」
「…大丈夫だ、じきに熱くなる」
「そうなの?」
頷くと毛の薄いそこにジャードは指を埋め、軽く泳がせる。するとラプラソスはびくりと脚を震わせ、突然息を乱し始めた。特に突起に指を当てれば声にならない声を漏らし、一番それに驚いた当人は頭上にあった枕を掴み、ぎうと抱えた。
「ん、んう…!?」
「お、おい…それじゃあ何を言ってるのかわからないんだが…せめて話すときは離してくれないか……」
ジャードの希望は通り、ラプラソスは恐る恐る枕を少し持ち上げ、疑問の声を投げかける。
「っな、なに……?」
「嫌だったか…」
「やじゃない…けど…びっくりした……」
「そ、うか…じゃあ、ゆっくりするから…」
「ん……」
ラプラソスは再び枕を口元に押し当てる。ジャードとしてはその反応を見ていられるだけで良かったため、涙を滲ませたラプラソスの頭を撫でてあやすなどした。それからまたその膨らんだ突起をゆっくりと撫ぜれば、ラプラソスは体全体でびくびくとし、顔を茹るほどに真赤に染めて息を荒くする。
「…気持ちいいか」
「ん、う、わか、んな……」
「……もっとするか?」
「あえ…うん…?して……」
もはや頭もよく働かぬようで、とりあえず肯定しているようにも見えたが、ジャードはそれを聞き、また太い指を動かす。突起はあまり大きくもないため、つまむなどはできなかったものの、撫でているだけでラプラソスは満足のようだった。愛液はとめどなく溢れ、ジャードの掌を濡らした。
「ぁ、う、んぃ…っふ、う…っ…!」
「…何故ここまで無防備なのか……わからんな……」
「っ、ぅ…?」
「いや、なんでも…」
ここまで来てもラプラソスはこの行為に不信感を抱かぬようで、潤む紫の瞳は焦点を失っていた。ジャードが服の上から再びこの状況で胸をつまめば、枕越しでも分かるほどの高い声を出す。それが楽しく、ジャードはその胸の頂を優しく爪でかりと掻いたりなどもした。その度にラプラソスは非道く感じ、余計に身体を敏感にしていく。
「…怖かったら、言ってくれ」
「ふ、ぁ…?」
ジャードは指をずらし、きゅうとする中に指を挿れる。そこはおそらく本人も触った試しがなく、それだけでラプラソスはちかちかと目の前が瞬くのを見た。そこは熱くきつく、しかし絶えず分泌される愛液でジャードの指は全て収まった。体格差のためもあるのか、指先は何かに当たる感触があり、おそらくそれは子宮口であった。
「っは…っは、ひっ…?」
「痛くないか…?」
「も、わかんな…なに…どこ、はいってるの…」
「ああ…今まで経血が出ていたところだ」
軽く説明し、それにラプラソスが納得する前に軽く指先を動かす。子宮口の手前のふわりとした感触を持つところに刺激を与えれば一等ラプラソスはあえいだ。抜き差しするだけでも脚は震え、白い太腿がジャードの腕を挟む。
「…敏感だな」
「ふ、ぅ…なん、れ、こんなこと、するの…」
「ああ…うん…お前は知らなかったな、俺について」
「じゃ、どに、ついて…?」
呂律の回らぬラプラソスは表情も瞳も思考までも全てが蕩け、ほぼ本能のままになっていた。その中でも僅かに残った理性がそれを問い、ジャードは少し表情を崩す。
「なんと言えばいいか…お前が月経だったからと言えばいいか…」
「おれが…?」
「そう…俺は血を見ると堪らなくなってしまって…」
「そうなの…?ふしぎだね…」
「…そうだな、あまり…知らない方が徳やもしれん」
ジャードはまたラプラソスの髪を太い指で梳いた。ラプラソスはその硬い掌にすりと擦り寄り、指が目の前にあるとわかるとそれを短小な舌でひとつ舐めた。それは目も開かぬほどの子猫のようであり、また、妖艶さをはらんでいた。
「…なあ、」
「…?」
「すまない…好きだ、こんなことをしておいて厚かましいが……お前が今女体だからではなくて…純に……」
煌々とした橙の瞳はすっかり澄んでいた。ラプラソスは言葉の意味をひとつひとつ理解しようとし、しばらく間を空けてから微笑をひらめかせる。
「…ごめんね、いま、おれ…頭動かないや」
「…ただ…ひとつ頷いてくれれば、それで」
それが卑怯であると分かってはいたのだが、それでも誘惑には敵わなかった。ラプラソスは何も理解しないままに頷き、ただひとつだけ言った。
「あ、でもね…おれもジャードのこと好きだな、おんなじだ」
「……ああ、」
その好意の意味に関しては触れなかった。恐らくその問いはずっと禁忌として残ることがジャードにはよく分かっていた。頬を擦り合わせ、軽い接吻をする。それから再びすっかり熱くなった指を動かした。発情しているのか子宮は降りてきており、余計にラプラソスに快楽を与えた。
「っん、ぅ、ひっぁ…っう、う…だめ、そこ…」
「…どこだ」
「その、なんか、ぐりぐ、り、するの…!」
「ああ…これか」
ジャードは指先に当たる小部屋を撫でる。その度に中はきゅうと締まり、ラプラソスの瞳は蕩けた。簡単な抜き差しでも最早そこに触れることができ、いよいよラプラソスの脚はがくがくと震える。
「っ、ぁ、っは、っく……ぅん……っ…!っ、ぅ……!」
「達したか…気持ちよかったか…?」
ラプラソスは唇を噛み、腰をびくりと震わせて果てた。シーツには染みができ、荒く息をつく。
「っう、ん…ぁ…おなか、なんか、ぎゅってして、いたい…」
「ん…本当に敏感だな……」
余韻にあえぐラプラソスの腹にジャードは掌を当て、少しでも痛みが緩和されるようにした。この一部始終について何の知識も持たないラプラソスは自然と落ちる瞼に抗おうとせず、深く息をしながら瞼を落とす。
「む…寝たか…?」
せめてもの罪滅ぼしにと行為の説明をしようとしていたジャードは寝息を立て始めたラプラソスに驚き、そして微笑んだ。このことを明日覚えているか、記憶力の乏しい彼女のことである。もしかしたら、いつも通りの朝を迎えるのかもしれない。もしくはこのことについて聞いてくるかもしれない。どちらにせよ、起きたことは変わらないのである。ジャードはラプラソスの汗を拭うなどしながらそのようなことを考えてばかりいた。
もし仮に恋仲になるとしても、発端は最悪なものである。嫌われる可能性も大いにある。僅かな期待とその他を占める自責の念に苛まれながら、ジャードは彼女を彼女の部屋へと戻した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 2