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* Scent.3 *
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……────。
──『いい? どうしたいのって聞かれても、施設に行きたいですって言うのよ。私達のところにいたいとか、他のお家に行きたいなんて、絶対に言わないで』
家族からも見放され、親戚中をたらい回しにされた果てに、真綾の姉に一時的に立花は引き取られることになった。
1年に何度かある集まりで叔母と会ったことがあり、その度に立花をよく可愛がってくれた。
真綾に目元がよく似ていてよく笑う優しげな女性だと、幼いながらも記憶していた。
今はその面影の一片すら存在しない。
最後に行き着いた多少血の繋がりのある家庭でも、オメガの立花は迎え入れられることはなかった。
叔母の忠告に、立花ははい、と迷うことなく答える。
誰に言われなくとももとよりそのつもりだった。
両親さえ捨てた子供を、もっと血の薄い他人が世話を焼いてくれる訳もない。
立花の処遇を決める、次の親戚の集まりで、立花が「施設に行きたいです」と一言言えば、大多数は不幸な思いをしなくてもよくなる。
『お前、施設に行くの? やられても泣き寝入りするだけだよ。お母さんにここにいたいです、って泣きついたほうが賢明だと思うけどな』
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