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* Scent.3 *
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最下層に位置するオメガの比率は、全体の人口の1割にも満たない。
オメガの血を一滴も入れていない全員がアルファの本家、およびベータが大多数の分家には、立花のような例が今までになかったのだ。
得体の知れないオメガの立花の面倒を見るなど、誰も進んでやりたがらない。
「施設に……行きたいです」
「施設に? 誰か、大切なお友達でもいるのかい?」
「……いない」
ふるふると首を振る立花の髪を混ぜるようにして撫でながら、優しく問いた。
オメガの首輪がついた立花をそんなふうに触れて、気にかけてくれる人はいなかった。
奥底に押し固めていた本音が、ぽろぽろと溢れていく。
「そうか。なら、私のもとへ来ないか。君を家族として迎えよう」
「え……?」
言いつけを頑なに守っていた、立花の瞳が揺れる。
立花が最も欲してやまなかったものだ。
瑛智の言葉に動揺しているのは立花だけではなく、周りも同じだった。
「どういうことなの……包海家はアルファの家系よね? オメガを引き取るなんて」
「財産でも隠し持っているんじゃないのか。ただで面倒見るなんてあり得ない」
「でも、親に捨てられたんじゃなかったかしら」
ひそひそと立花の待遇について噂話を立てる輩を、瑛智は鋭い目線を使って諌めた。
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