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* Scent.3 *
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「少し、待っていなさい」
車を路肩へと停めさせると、瑛智はパティスリーへ1人で入っていった。
立花も追いかけたかったが、首輪の存在を思い出して人目のつく場所へ出ることをつい躊躇ってしまう。
不安げに外を見つめる立花に、「大丈夫ですよ」と運転手が話しかけてくれた。
数分経った頃に、白い紙の箱を手に提げた瑛智が車へと戻ってくる。
「また日を改めてお祝いをしよう。今日のところは……ささやかなものだが」
何年か前、1年に1回の立花の誕生日のときに両親が決まって用意してくれていた白い箱。
それを膝の上へちょこんと置かれた。
──いいんだ。僕なんかがいても、この人はいいって言ってくれているんだ……。
すっかり弱くなった涙腺から、また涙がぽろぽろと勝手に落ちては箱の上へと落ちる。
自分の居場所を守るために、気を張り続けていた毎日からようやく解放された立花は、久方ぶりに人の温もりを感じながら眠りについた。
× × ×
優しく揺さぶり起こされ、夜を照らす灯りに目を慣れさせながら徐々に瞼を持ち上げた。
ここが今日から立花の住む家だよ、と瑛智は入り口へと招き入れてくれる。
本当の家族と暮らしていたところよりも何倍も大きく、まるでファンタジー小説に出てくるようなお城のようだった。
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