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* Scent.6 *
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「何をした……」
「残念ながら俺も仁居先生とは接触出来ませんでした。そうですね……今頃、記者から逃げている最中でしょうか」
国費から研究費を賄っている大学病院の不正は、ゴシップ誌にとって格好のネタだ。
オメガを抱く代わりに、瑛智と交わした養生施設の建設を受け入れているという内容。
さらに、愛人にしていた複数のオメガ達の中には、無理矢理番にされた者もいて、その証言が記事に纏められるというのだ。
税金の中で仕事をしており、患者に適切に医療を分配しているはずの国立の大学病院のトップがオメガを軽視していると知り渡れば、イメージダウンは免れない。
「黒い証拠は全て消しているでしょうね。もちろん、秘密裏に行っていた敷地内公募の契約も」
「……君だってただでは済まないだろう。賢い選択とは思えない」
より財力と地位を持つアルファにへりくだるべきだと、涼風を唆そうとしている。
瑛智がいくら甘い言葉を並べても、不思議に思えるくらいに立花の心の中に焦りは生まれなかった。
「俺も先生も、国民からいただいたお金のおかげで研究が出来ています。常に公益性と誠実さと結果を求められる立ち位置です。仰る通り、いち早く利益を得るためなら、先生に研究を預けたほうがいいのでしょう。ですが信用を得られるのは1度きりです。……それに俺には、そんなものよりももっと大切なものがある」
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