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* Scent.7 *
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「涼風さんが頑張った結果です。でも体調不良ならしょうがないなって、大学側は待ってくれたりはしないんですか?」
「ないと思うよ。期日厳守だからね。俺の手を見ても、温情をかけてくれることなんて何1つなかったし」
生徒の実験の準備や片付けに呼び出されることがあり、後半はそちらのほうに時間を取られていたと、拗ねた口調で言う。
電気泳動ゲルに使うアガロースゲルの作成や、実験当日の補助など、手を怪我しているにも関わらず、連日駆り出されていたという。
「すごく頼られてるんですね」
「まさか。いいように使われてるだけだよ。あれだけ手伝ってあげたのに、論文はなかなか通してくれないし。題材はいいけどクオリティが低いってどういうことだよ」
肩の荷が下りたことで、涼風が過ぎた不満を喋る。
わざとらしい荒れた語気が、まるで駄々っ子のように聞こえてきて、立花は笑いを溢した。
尊敬はしてるんだけどね、と取ってつけた言葉に、今度は立花だけでなく、涼風もくすくすと笑う。
「そういえば、さっきの甘いコーヒーって仕返し?」
「ん、何がですか?」
仕返しについての心当たりが全くなくて、聞き返した。
「俺が立花君を涼風さんですよ、って紹介したこと」
「あ……。……うん、仕返しです」
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