アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
❖番外編(小さくなった咲太・前編)
-
※番外編
朝起きると…僕は何故か体が小さくなっていた。そう、親指サイズほどに、…だ!
「うわ〜〜〜っっ」
巨大なベッド、いいやそれはまるで巨大な真っ白の陸だ。
どうにかしないと〜〜っっ!僕はベッドのシーツの上をちょろちょろと駆け回る。
「うわっ」
そのうちベッドのシーツのシワ、つまり山のようになっている部分に足を引っかけ転倒する僕。
「いっいたいっっ」
顔面から倒れ、僕は立ち上がりながら鼻を手で抑える。蓮夏に気付いてもらわないと…っ、僕はこのまま餓死してしまう…っっ!(?)
そう思っていたところに、ちょうど蓮夏が僕の部屋に入ってきた。蓮夏〜〜〜っ!僕はベッドの上で喜びの余りぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「あれ?…咲太いない?」
下に僕がまだ降りていない為こうして部屋に来たのだろう蓮夏が、不審な顔をして僕の部屋を見渡し、眉を寄せている。
「…トイレかな」
そう言ってまさかのすんなり部屋を出て行こうとする蓮夏にあ然とする僕。う、うそ?!なんで分からないの蓮夏…!?僕はここ!ここだよ…!
「はっっっかあ〜〜っっっ!!!」
力の限り声を出す。
けれど蓮夏は気づく気配はない。
どうしよう、出ていっちゃう。…そうか、まさかこんなに小さいのが僕だとは思わないよな確かに。どんなファンタジーだよって話だよね。僕もそう思う。
でも、ここに置いてけぼりは嫌だ…っ!泣くよ僕…っ!ねえ蓮夏…っっ!ほんとに泣いちゃうよっ!
「あれ?いま咲太の声が聞こえたような…」
すると、ぐずる僕の方に奇跡的に振り向く蓮夏。
「…僕はここだよ蓮夏、気づいてよ蓮夏…ぁ…っっ」
うわーん!と年柄にもなく大声を上げて泣く僕。すると蓮夏がおずおずといった動作でゆっくりと僕の前までやってきた。
「……ま、まさか、……さ…くた…?」
その場に屈み、こちらをじっと凝視する蓮夏の顔。神様は僕を見捨てなかった…っ!!
「蓮夏っ!」
僕は涙を流して笑顔を浮かべる。駆け寄ってぴとっと蓮夏の頬に抱きつく。…というか貼りつく?
「うわ、ちょ、…ちょっと待って。何が起きてるんだ」
珍しく動揺した様子の蓮夏の声。そりゃそうだ、突然弟が親指サイズにちっさくなってたら皆そうなる。
「少し離れて…。君は本当に咲太?」
蓮夏は頬から僕をぺりっと剥がし、再び蓮夏の顔の前に立つ僕。僕は頭をぶんぶんと縦に振る。
「そうだよ!僕だよ!信じられないと思うけど、僕が咲太なんだよ!蓮夏!」
身振り手振りも加えて必死にそう訴えると目の前にある蓮夏の目が僕を見てまだ信じられないといった様子で目をぱちぱちとして何度も瞬きをさせていた。
「…信じられないけど…。でもそうみたいだね」
蓮夏の大きな巨大な手が僕に近づき、そのうちどこかの指が僕に触れる。
「蓮夏っ、つ、潰さないでよっ!」
大きな指にびくびくとしていると、蓮夏がふ、と微笑む。
「しないよ、そんなこと」
そう言って蓮夏が手を僕の前に差し出した。
?それを見て首を傾げると、おいで、と言う蓮夏。
「…よいしょ」
蓮夏の手のひらに乗ると、ゆっくりとその手を上にあげ、向きを変える蓮夏。
「ごめんね。仕事行かなきゃ」
そう言いながらゆっくりと蓮夏は僕を手に乗せたまま下に降りていってくれた。
「ご飯どうする?」
とりあえず、というように僕をテーブルの上に下ろした蓮夏が尋ねてくる。
「パンをちぎってあげようか。ううん…これだけ小さいと何を食べさせたら栄養がつくのか分からないな。目玉焼きも大きいだろうし…」
こんなファンタジーみたいな僕の姿でもそんなことで悩んでくれる蓮夏。僕はふと傍にあった皿を見て、指を指す。
「これでいいよ」
「え?」
蓮夏が驚く。恐らく僕が指を指したのは蓮夏の食べ終わったお皿なのだろう。でも僕目線だと食べやすいサイズのパンがそこにあるように見えるのだ。
「ダメだよ、こんなの」
「いいよっ!それに蓮夏の食べ終わったお皿なら全然大丈夫!」
「え?」
僕はパクパクとパンを食べた。
…はあ〜〜もう食べられないや。お腹いっぱい!そう言って蓮夏を見上げると、困ったような優しい蓮夏の表情。
「小さくなっても咲太はかわいいね…。」
僕を手のひらに乗せ、にこにこと満面の笑みを浮かべる蓮夏。
「あ、着替えどうしよう?というよりそんな姿じゃ大学にも行けないよね。」
「うん、仕方ないよ、今日は休む。蓮夏!僕のことはいいから早く出かける準備して!」
声が届いてるか不安なので手を上にあげてその場をすこし跳ねながら言ってみる。すると、蓮夏がおかしそうに笑った。蓮夏、楽しそう…。僕はそれを見て同じようににこりとする。
「……このまま瓶の中に入れて一日中眺めていたいなぁ…」
とろんとしたとても幸せそうな表情で僕を見つめる蓮夏に思わず流されそうになったが、ち、ちょっとまって、……び、瓶の中……?って…?え?
「……そ、そんなことしたら、…僕、し、しんじゃうよ…っ、蓮夏っ……」
顔を真っ青にして目の前にある笑顔を浮かべる蓮夏を見る。怖くて半泣き状態である。
「はは、冗談だよ。よしよし」
…ほんと?!!?
「俺だって咲太の頭とかほっぺたとか、ちゃんと触れられないのは辛いしね。」
蓮夏はそう言っておもむろに顔を迫らせてきた。うわっっ!なんか柔らかくて熱い感触したのが体に当たったっ!ま、まさか今のって蓮夏の唇…?!体が小さ過ぎて唇かどうかすらきちんと判断できない。辛い。
「さ、会社に行くよ。家に置いておくのも不安だから連れていくね。」
確かめるように聞く蓮夏に、僕はうんっ、と元気よく頷いた。
僕を手に乗せる蓮夏はどこか上機嫌。
今日は蓮夏のお仕事に付き添いする1日になりそうだ、…少し楽しみ。
僕は蓮夏の長い指の先にぴたりとくっつき笑顔を浮かべた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
39 / 116