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10-6.蓮夏の告白
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僕は兄の車から降り、ついて行くという兄に断りを入れて1人で家へと入っていった。
蓮夏はいつも通り、僕を見てすぐおかえり、と笑って出迎えてくれると、キッチンでお湯を沸かし出した。
僕はそんな蓮夏にすぐさま駆け寄った。
「蓮夏、」
切羽詰まった表情で蓮夏を見上げる。蓮夏は僕の様子がいつもと違うことに気づいたのか、ふと笑みを消した。
「どうかした?」
コトン、と机の上に温かいお茶の入ったコップを置き、蓮夏が向かい側の席につく。
僕はゆっくりとお茶の置かれたその席へと着いた。
「……聞きたいことが、あるんだ。あのね」
その時、もう蓮夏は僕の話出すことを理解していたのかもしれない。
蓮夏の表情が暗いものへと変わる。
「……僕、蓮夏の本当の弟じゃないのかな?」
僕は前に置かれたお茶の入ったコップを両手で握りしめながら言った。顔を下に向け、ドクンドクンという自分の心臓の音を耳にする。
「…ああ。そうだよ」
蓮夏の返事に僕は既に分かっていながらも、大きな衝撃を受ける。
「……ぼく、は、蓮夏に引き取られてたの…?」
頭の中が混乱している。蓮夏は至って冷静な様子に思えた。
「…君と会ったのは、ある病院だった。」
「え…?」
何かをこれから語り出そうとする蓮夏に僕は何故か恐怖する。
「俺には、君とは別に血の繋がった実の弟がいた。彼の名は咲太」
え……。
「……なに、どういう…」
「弟はその病院でなくなった。元々生まれた時から病院から抜けられたことはないくらい病弱だったしね。俺も、仕方ないことだと思っていた」
…実の弟?僕ではない……。蓮夏、僕は、蓮夏から初めて聞く話に驚きを隠せずにはいられない。
蓮夏は僕を目に映さずに続けて話した。
「でも、その時偶然記憶のない身寄りもない弟くらいの歳の子どもがその病院にやって来た。…それが、君だったんだ。」
え…。
「……俺は、君が弟の生まれ変わりだと思った。俺は君が欲しかった。……君を君の兄から盗んだのは、俺だよ。咲太」
いつの間にか、顔をあげると蓮夏が僕を真っ直ぐに見つめていた。
こんな時でも、変わらず蓮夏の顔は美しく、そして僕は蓮夏を見て胸をときめかせてしまっている。
…やっとわかったんだ、どうして蓮夏と僕がどうしてこんなに違うのか。その理由が、ようやく。
なぜなら僕たちは、偽りの兄弟だったから。
蓮夏の話を頭の中で整理した僕は、静かに口を開いて言った。
「…蓮夏にとって、僕は、…その亡くなった弟の身代わりだったってこと…?」
亡くなった弟の名は、さくた。
そして恐らく蓮夏は、僕に、彼と全く同じ名前をつけた。
……知らなかった、そんな秘密があったなんてこと。…僕は何も知らなかった。
「……違う。俺は」
蓮夏の手が僕に近づく。僕は反射的に思わず席を立ち上がり体を後退させた。
「触らないでっ…!」
僕は蓮夏を拒絶した。
蓮夏が僕を見て、悲しそうな顔をしていることが分かっていたとしても、僕はまだ混乱していた。
僕は……やっぱり蓮夏が、分からない。
……分からないんだ。
「…蓮夏は…いつも肝心なことは教えてくれない。僕を愛してるとか好きだとか…そんな言葉も全部、嘘だったの…?」
どうして…。
「…そんなわけないじゃないか、俺は君を愛してる、好きだよ。だから、…だからこそ言えなかった、本当のことなんて、絶対に…。…咲太、聞いて、俺は」
「いやだっっ!意味わかんないっ…!信じられないよもう蓮夏の言うことなんて!!!」
いつの間にか僕は蓮夏の言葉を遮るようにそう声を上げていた。
僕はテーブルを挟んで蓮夏の前に立ち、うう…と小さな声を漏らし涙をぼろぼろと零した。
「…咲太」
「…蓮夏、ねえどうして…どうして…」
「……」
「…なんで、お兄ちゃんに嘘をついたの…?どうして僕に…本当のお兄ちゃんのこと教えてくれなかったの?」
「……」
「…蓮夏は僕を守ってくれてたの…?それとも…蓮夏は僕に、お兄ちゃんに会わせたくなかっただけだったの…?」
どっち…?僕の問いに、蓮夏は何も答えなかった。
僕は涙を流しながら震える口元を動かした。
「蓮夏……僕…蓮夏が…、…分からないよ…」
僕は蓮夏の前から姿を消した。
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