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13-4.現れた人
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……蓮夏にいつまでも頼っているわけにはいかない。自分の力で、どうにかするんだ…っ!これくらい平気っ!
「おらぁーーっ!!」
僕は肩に掛けていた鞄を手に取り、それで草陰からちょうどガサリと出てきた人物に向かってばんばんと勢いよく振りかざし叩いた。全然怖くないっ!全然怖くないからな!!
「うわぁぁぁああ!」
最早半泣きでそのまま鞄で叫びながら叩き続けていると、ふと、おい!いい加減やめろ!!という怒声が聞こえた。僕はそれにビクッとして体を硬直させた。…ど、どうしよう。お、怒ってる…(当たり前)。恐る恐る鞄をその人物から退けると、そこにはこちらを見てキッと強く睨んでくる見知らぬ人の姿が。
だ、だ…っ、
「…誰ですかーーっ?!!」
そう言いながら僕は今すぐにでも交番に向かう体勢をとる。すると、
「おい落ち着けって!」
ぐっとうしろから襟首を掴まれて身動きを止められる。…や、やばい捕まった…。
「…お前、そんなに俺が嫌いかよ」
ふと、半泣き状態の僕の耳にそんな声が聞こえてん?と頭に疑問符を浮かべた。そんなに俺が嫌い…?て、え、この人…もしかして僕の知り合い?
恐る恐るちら、と再び彼を見てみる。すると、黒髪をした少しつり目の男はむすっとした顔でこちらを見て不貞腐れている。……あれ、もしかして。
「…兵藤(ひょうどう)くん?」
僕は鞄を手に持ったまま、目を点にしてそう尋ねる。
「そうだよっ、今更気づいたのかお前はっ!いきなり全力で誰かもわかんねえ奴を鞄で叩いてくるなんて野蛮な奴だなお前はっ!」
ぷんすかと怒る彼を目の当たりにして、僕は過去の記憶を少し遡らせる。彼は兵藤くん。子どもの頃、マラソンの出来ない僕を、というか体育全般出来ない僕を、無理やり出ろと言って走らせ、僕を倒れさせた、…イメージ的には性格の悪い男の子、だった人だ、そういえば。
「……」
「…な、なんだよその目は!」
「…僕に何の用かなと思って。もしかしてまた僕に何か悪いことし」
「ちがーうっ!俺は、あの頃のことずっと謝りたくてお前のこと探してて…」
え?
兵藤くんの話に目をぱちくりとさせる。
見ると、どこか顔を赤くさせ、頭を手で触り目線を斜め下にそらす兵藤くん。
「……兵藤くん」
「別にずっと探してたわけじゃねえけど、最近、合コン行った時にたまたま小耳に挟んだんだよ、花房がどーのって話をちらっと、それでここらに住んでるって辺り探して、それで家行って、そしたら新しい家に引っ越したって知って、それからまたずっと探してて…」
合コン……。なんでそこで花房の名前が上がってくるんだろう?蓮夏の知り合いだった、とか?まあ、蓮夏は目立つからなぁ…頭的にも見た目的にも…あの人が有名じゃないわけないし。
「ああっつーか合コンに行ったのは無理やり友達に誘われて強引に連れてかれただけだからな!言っとくけど!」
…?
「別に…どうでもいいよ、そんなこと」
「え…」
そんなことより、
「講義に遅れるっ!じゃあまたね兵藤くん!」
せっかく早起きして頑張ったのに1限目遅れるなんてあり得なさすぎるー!
駅に向かって走る僕を、後ろから兵藤くんがおい!と何やら声をかけてきたけど、ごめんまた今度っ!と言って僕は足を止めることは無かった。
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