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灰色の瞳のとら猫のお話1
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「おい」
「なに?」
「この状況は、どういう事なわけ?」
「どうって…」
住宅街の中にある、寂れたアパートの中に、大勢の屈強な男たち達は入って来て、2人は取り囲まれていた。木造のボロボロのアパートで、その建物は鬱蒼とした木々に覆われていた。
一応、人が暮らしていた頃は6部屋あって共同便所と共同の風呂が1階部分にあり、その時代には多くの人に利用されていたんだろうと思う。
しかし、大家も年を取り、長らく放置されたこのアパートには時間の年月と共に建物は痛み割れたガラスからは枯れ葉や雨風が入り込み、畳には水分を含んで膨張し酷い状態になっていた。そんなアパートに、人の出入りがあると通報があったのは数日前。2人の不信な若い男が住み着いているというものだった。
確かに、それだけだったら、ここまで大勢の男たちには囲まれなかっただろう。2人が、只の不信な若い男だったら…の話だ。
「今まさにお命頂戴つかまつりまつる?」
妙な言い回しの言葉を口にして、相方を苛立たせた。豪快な舌打ちの後、銃口を2人に向けて言い放った。
「両手を上げて頭の後ろに組むんだ!大人しく従え!」
まるで、宗教のように同じ服を着て顔を隠し、同じ銃口を向けているため個性はない。大人しく、両手を頭の後ろにくんで、床に両膝をついて顔を伏せた。
「はい」
2人はそれに従った。
「お前が、そうやって誰に対しても無愛想だから悪いんだぞ?」
囁くような声で、同じ姿勢の相方に小言を口にすると「黙れ!」といわれ、銃口を強調させられる。
取り囲んだ男たちの中では数人が銃口を向けたまま外部と連絡を取っている者がいた。この部屋以外にも、大勢がこの狭いボロアパートにいるらしかった。2人相手に、大層な事だ。
「1、 2…3…4、5、6…」
顔を伏せ、何やらブツブツと数を数えだした男に対して頭に冷たく硬い銃口を当てながら、いわれる。
「黙れ!大人しくしろ!」
「してんじゃねーかよ!るせーなっ!」
ぎゃーぎゃー騒ぐんじゃねーよと苛立ちながらそう言った男は、口を噤んだ。
「ねーねー…俺らはさ。確かに怪しいヤツかもしれないけど殺し屋だって決まった訳じゃないじゃない?」
「…」
馬鹿なのか?暢気なのか?
相方の言葉にため息が出る。
「お前さぁ」
自分で、自分の正体をサラリと曝露したようなものだ。しかも、何の目的があってそんな事をいったのかも分からない。すると、床をドスドスと誰かが歩いてくる揺れを感じて2人の後ろで止まった。
「ブチとトラ…だな」
完全に見下されているに違いなかった。
「あ!その声は…!」
聞き覚えがある声だった。絶対絶命なこの状況に暢気な二人は声を明るくさせて顔を上げた。
「「ポチ!」」
二人は声をそろえて言った。
「ポチじゃねぇえ!」
二人がその男の姿を確認するや否や二人は弾かれたように身を交わした。
「おいっ!捕まえろっ!」
彼等二人を捕まえる為に揃えられた特殊部隊は人間とは思えない俊敏な動きであっという間に交わされてしまうことになった。
日本の警察が銃を撃つことが命がけであり自分たちに向けられた銃口はハッタリだという事を嘲笑うかのようだった。
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