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恋人
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「乃亜?どうしたんだ?」
旭と待ち合わせている場所まで走って来た僕を見て、旭が驚いた声を出す。
僕は、ハアハアと肩を上下させて、荒い息を落ち着かせようとした。
「…いや、遅れそうになったから、慌てて来たん…」
「別にいつまでも待つからゆっくり来たらいいのに…。また貧血を起こしたら大変だよ。ほら、そこでちょっと休もう」
旭が僕の肩を抱いて、すぐ傍の木の下にあるベンチへと連れて行く。
僕を座らせると、「ちょっと待ってろ」と離れる。
僕が背もたれに凭れて目を閉じていると、すぐに「乃亜」と旭の優しい声がした。
「ほら、これ飲んで」
「ありがとう…」
旭に手渡された冷えたミルクティーのペットボトルを、熱くなった頬に当てる。
「あー、冷たくて気持ちいい…」
「乃亜、俺の見てない所で無茶するなよ。もし貧血で倒れても、すぐに助けてやれない…」
「大丈夫やって。ちょっと調子に乗ってしもただけやし。次から気をつけるから」
「うん、約束な」
「心配性やなぁ」
ペットボトルを旭の頬に押しつけて、「冷たっ」と声を上げる旭の反応を見て笑う。
旭に心配されるのは、心地良い。僕のことを思ってくれてるから心配するんだと思うと、とても嬉しい。
こんな風に旭と二人で、ずっと平穏に過ごしていきたい。もちろん、おじさんも一緒に。
旭が、僕の腕を掴んでペットボトルを遠ざけると、素早く唇にキスをした。
「…んっ。…ばっ、バカっ、誰かに見られたら…っ」
「いいよ。俺は、乃亜が恋人だって、皆に言いふらしたい」
「…変な目で見られるかもしれへんで?」
「いい。乃亜に熱い視線を注がれるよりも全然いい…」
何を言ってるんだと、目を見開いて旭を見る。
一体誰が僕に熱い視線を注ぐと言うんだ。
熱い視線を注がれているのは、旭の方なのに。
でも、そうだな。旭が僕の恋人だって知れ渡ったら、旭を好きな人も、諦めてくれるだろうか。
「ふっ、大きな目。乃亜は、綺麗な目をしてるよな」
「なんやねん…。さっきから褒め過ぎや…」
旭の視線から逃れるように俯いて、握りしめたペットボトルを見る。
僕の目なんか、褒めないで。
僕の目は、旭とは違うんだ。
僕の目は、気持ち悪い。とても禍々しく、赤く光るんだから。
僕の本当の目を見た時に、旭はどんな反応をするんだろう。
そう頭に浮かんだ考えを振り払うように軽く首を振って、僕はミルクティーをゴクゴクと飲んだ。
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