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ああ…気持ち悪い。
目を閉じてるのに目が回っている。
でも…少しマシになってきた気がする。
あれ?おじさんの声がする。
あ、そうか。タクシーの運転手の人、ちゃんと病院まで運んでくれたんだ。
あーあ…、こんな姿…旭には見せられないなぁ。
ますます過保護にさせてしまう…。
額に冷たい感触がして、思わずピクリと肩を揺らす。
それに気づいたのか、おじさんが「乃亜?大丈夫か?」と声をかけてきた。
僕は、数回瞬きをして目を開ける。
すぐ目の前で、おじさんが、とても心配そうに僕を覗き込んでいた。
「お、じさ…ん…」
「乃亜、気分はどうだ?」
「最悪…」
言うなり「ぐっ…」と嘔吐いた僕は、おじさんが慌てて出したトレイの中に、胃の中の物を吐き出した。
「うぇっ…ケホッ」
「全部出した方が楽になるぞ」
「ケホッ…、もう大丈夫…」
おじさんが、僕の口をティッシュで拭いて、トレイを傍に控えていた看護師に渡す。
看護師が部屋を出て行ったのを見て、「何があった?」と聞いてきた。
僕は、身体を起こしてベッド脇の棚に置いてあったペットボトルの水を半分ほど飲むと、大きく息を吐いた。
「…学校が終わってすぐにここに来ようとしたんやけど、前に話した月島…、あいつに拉致られた」
「はあ?なんだとっ!?」
ガタンと大きな音をさせて、椅子から立ち上がったおじさんの服を引っ張っると、座るように促す。
渋い顔をしたおじさんが座るのを見て、再び話し出した。
「車でこの近くまで送るって言われて、つい油断してしもた。車の中で変な薬を嗅がされて眠らされて…。気がついたらどこかの部屋で。僕の仲間やとかいう数人がその部屋にいた…」
「仲間…」
「そう。月島が言うには、僕は、その人達にとっては、憧れのすごい存在らしいで?意味わからんわ。それで、悪趣味な月島に、血を飲めと勧められて、はっきりと断った」
「血?誰のだ…?」
「さあ…コップに入ってたから…。ほんま、嗅がされた薬の匂いや血の匂いで最悪やった」
「よく…部屋を出てこれたな」
「帰る!言うたら、すんなり帰してくれたで。月島は何がしたかったんやろ?」
「月島 倭か…。乃亜、その子にはもう近づかないようにな。充分に怪しい」
「僕は離れてるんやけど、あいつがすぐ近づいてくるねん。でもわかった。今までよりも、もっと気をつける」
「ああ、頼むぞ。辛いのに長い話をさせて悪かったな。さあ、点滴が終わるまで寝てなさい」
「うん。終わったら起こしてな」
僕の頭を撫でるおじさんに頷くと、そっと目を閉じた。
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